1992 年 53 巻 3 号 p. 705-709
盲腸癌経過中に発症し,急激な転帰をきたした壊死性筋膜炎症例を経験したので報告する.症例は72歳の男性で右下腹部腫瘤を主訴として来院した.入院精査にて盲腸癌の診断を得ていたが手術前夜より右大腿部に暗紫色の水泡を伴う皮膚壊死が出現した.盲腸癌の右大腿部への穿通を疑い,翌日,右大腿部を切開排膿および壊死した筋膜の切除をした後,右半結腸切除除を施行したところMOF, DICを併発し術後第2病日に死亡するに至った.壊死性筋膜炎は比較的稀な皮膚軟部組織感染症であり,消化器外科領域の疾患に合併することは極めて稀である.本症は極めて予後が不良なことより外傷の有無にかかわらず,全身症状を伴う広汎な皮膚壊死の出現に際しては,本症及びその類縁疾患を念頭におき対処することが必要である.