抄録
症例は66歳男性.腹部膨満感を主訴に来院.結核及び痔瘻の既往歴なく,家族歴にも結核は認めず.直腸指診,注腸造影,大腸内視鏡で肛門縁より3~4cmの部に全周性狭窄を認めた.同部からの生検では悪性所見は得られなかったが,腸閉塞症状増強するため直腸癌の疑いで直腸切断術を施行した.摘出標本の病理組織診断で直腸結核に併存した直腸癌であることが判明した.癌の組織型はmucinous adenocarcinomaで癌腫は直腸粘膜面には認められず,肛門腺由来の腺癌と考えた.
大腸の結核と癌の合併はまれで本邦においては1930年原田の報告以来,検索し得た範囲では55例が報告されているにすぎない.多くは結核の好発部位である回盲部から右半結腸に見られ,自験例のように直腸での合併症は痔瘻癌の2例以外は認められなかった.直腸結核に合併した直腸癌の1例を経験したので報告した.