抄録
高齢者の術後感染症,特にMRSA感染症を検討した.最近3年間の虫垂炎を除く教室手術644例をA群(20~64歳), B群(65~74歳), C群(75歳以上)の3群にわけて検討した.感染発症率は, 9.1%, 18.3%, 22.9%と高齢群ほど高かった.感染部位では, C群では呼吸器感染とカテーテル感染が有意に多かった.分離菌では, MRSAがA群23.5%, B群26.0%, C群56.0%と高齢群に有意に多く分離された. C群のMRSA感染は縫合不全や呼吸器系の基礎疾患をもつ患者に多発していた.術後感染予防に使用された抗菌剤は, A群, B群では第一,第二世代セフェム剤が多かったが, C群では第三世代セフェム剤が31.8%,セフェム剤とアミノ配糖体剤の併用投与が45.5%と有意に多かった.このことから, C群では高齢者の感染防御能の低下を意識した抗菌剤の選択が逆に菌の選択をまねき, MRSAの分離率頻度を高めたと考えられた.高齢者の術後には手術の汚染度,汚染菌を考慮した薬剤の選択が必要であると思われた.