1992 年 53 巻 6 号 p. 1338-1342
症例は32歳男性.心窩部痛背部痛を主訴とし当科来院.精査の結果大動脈周囲リンパ節転移を伴った胃癌と診断された.化学療法施行後手術施行した.総肝動脈は完全に腫大リンパ節に巻き込まれており, P0H0N4S0, Stage IVの進行胃癌と診断し,膵脾合併胃全摘術,胆嚢摘出術,総肝動脈合併切除術,肝動脈再建術, R3及び大動脈周囲リンパ節郭清術施行した.術後23日目肝膿瘍の腹腔内破裂により敗血症となり死亡した.
近年進行胃癌に対して大動脈周囲リンパ節郭清の意義が認められつつあるが,一方で合併症の増加も報告されている.肝膿瘍の合併は稀ではあるが,胃癌に対しての肝動脈再建を伴った拡大手術は肝膿瘍の合併に充分な注意が必要と考えられた.