抄録
症例は31歳,女性. 15歳時,胸痛と喀血を主訴に近医を受診し,前縦隔に腫瘤陰影を指摘されたが,その後の大量喀血後に陰影が消失した. 1990年に再度喀血し,当院に入院した. CTにて左前縦隔腫瘤を認め,左気管支動脈・左内胸動脈造影で同腫瘤部位の濃染像を認めた.これらの精査から喀血は縦隔腫瘍の肺内穿破によるものと思われ,手術を施行した.胸骨正中切開にて開胸すると,胸腺左葉に,左肺(S3)や心膜と線維性癒着を示す前縦隔腫瘍を認め,これらを合併切除した.病理組織診断は成熟奇形腫であり,合併切除した左肺S3には慢性炎症反応および出血巣を認めた.縦隔腫瘍は一般に検診や圧迫症状で発見され喀血をきたすことは稀とされるが,本症例のように,慢性炎症性線維性癒着が原因となって,肺内穿破により喀血をきたす縦隔腫瘍が存在することも念頭に置き,精査を進めることが重要であると思われた.