抄録
Björk-Shiley弁による僧帽弁置換術14年後血栓形成による弁機能不全に対し,緊急手術で救命し得た1例を経験した.症例は44歳女性,僧帽弁閉鎖不全症の診断にて昭和51年Björk-Shiley弁による僧帽弁置換術後,外来通院抗凝固療法を施行していたが,平成元年8月出血性胃潰瘍での入院を契機に心不全症状が増悪.心エコー図, Swan-Ganzカテーテル検査等により人工弁機能不全と診断し緊急手術, minor-strut部の新鮮血栓による著しい弁可動性制限が認められたため, St. Jude Medical弁29mmにより再弁置換を施行した.術後は経過良好で第20病日に退院した.本症例は14年間特に心愁訴なく経過していたものであるが,出血性胃潰瘍のため抗凝固療法中止,止血剤投与,輸液などの過剰水分負荷によって誘発された心不全と血液凝固能亢進により形成されたと推測される新鮮血栓が,決定的な人工弁機能不全を招いたものと考えられた.