抄録
結腸静脈の石灰化を伴った結腸炎の症例を経験した.症例は77歳の男性でイレウス症状にて発症した.腹部単純X線写真にて,右側腹部の石灰化陰影を認め,又注腸造影上,上行結腸から横行結腸にかけて,辺縁の鋸歯状化と内腔の狭窄像を認めた.保存的治療にてもイレウス症状の改善がみられないため,虚血性腸炎の術前診断にて手術を施行した.開腹所見で盲腸よりS状結腸までが暗黒色となり壁の浮腫が認められたので,同部の通過障害によるイレウスと判断し結腸を広範に切除した.摘出標本の軟線X線像を石灰化陰影の局在部位を同定する目的で撮影したところ,盲腸より横行結腸にかけて結腸の壁内の静脈より辺縁静脈にかけ,あたかもバリウム注入後に撮影したかのような石灰化像をみとめた.病理所見では粘膜下層を主体とする壁全層に及ぶ炎症性の変化であった.