日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
急性腹症を呈した成人腸間膜リンパ管腫の1例
田辺 博今井 直基渡辺 進橋本 高志下川 邦泰池田 庸子
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 53 巻 7 号 p. 1665-1669

詳細
抄録
急性腹症にて発症した成人の腸間膜リンパ管腫の1例を経験したので報告する.症例は42歳,男性.上腹部痛と発熱を主訴として近医を受診,急性胆嚢炎の診断に当院を紹介された. WBC 13,900/mm3, CRP 3+と炎症所見を認めた.腹部超音波検査では上腹部に胆嚢とは異なる,境界明瞭で内部に蜂巣様構造を示す嚢胞性の病変を認めた.腹腔内に発生したリンパ管腫に感染が加わったものと診断し,保存的治療をした後手術を施行した.
開腹すると網嚢内に横行結腸間膜から発生した超手拳大の腫瘤を認めた.腫瘍は周囲と強固に癒着していたが剥離可能であり,これを摘出した.摘出標本は暗赤色で表面平滑な腫瘤で,割面は蜂巣様構造を呈していた.組織学的には炎症を伴ったリンパ管腫の像であった.本邦における成人の腸間膜リンパ管腫の報告は極めて少なく,その臨床的特徴について検討した.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top