抄録
早期胆嚢癌を組織学的壁深達度がm, pmまでの胆嚢癌と定義し,自験8例につきその診断,手術術式につき検討した.なお,自験例の組織学的壁深達度はm 6例, pm 2例である.術前診断は,胆石症7例,胆嚢ポリープ1例であり,胆嚢癌との術前診断例はなかった.癌の診断時期は,術中診断例が2例で,その肉眼型は,いずれも隆起型であり,大きさは, 0.5cmと1.7cmで迅速病理組織検査で癌と診断した.その他の6例は,術後,病理組織検査で癌と判明したもので,その肉眼型は, 6例中5例が平坦型であり,残り1例は大きさ0.5cmの隆起型で術中肉眼的に良性と判断したものである.施行術式は,術中診断群2例中1例には,肝床側で深達度の判定が困難なため胆摘とリンパ節郭清に肝床切除を付加した.残り1例は,腹腔側であったため胆摘とリンパ節郭清を施行した.術後の病理組織検査では,いずれも深達度mで, n (-)であった.一方,術後診断群6例(m: 4, pm: 2)のうち,深達度mであった4例には2期的に追加手術は行わなかった.深達度pm 2例中で肝床側の1例に肝床切除とリンパ節郭清を追加した.他のpm 1例は,腹腔側であり追加手術は行わなかった.全例n (-)で,遠隔成績は, 8例生存中である.