日本臨床外科医学会雑誌
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大動脈に穿通していた膵仮性嚢胞の1例
坪野 俊広福重 寛武藤 輝一
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1992 年 53 巻 7 号 p. 1698-1701

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抄録
腹部大動脈に穿通した膵仮性嚢胞の1例を経験した.
症例は60歳の男性で,心窩部痛を主訴に当科に来院した.初診時すでに膵鈎状突起に嚢胞内出血を伴う膵仮性嚢胞を認めた.経過中に消化管内や腹腔内への出血は認めず,腹部血管造影などでも出血血管は同定できなかったが,破裂の危険が大きいと考え手術を施行した.術中に出血源が上腸間膜動脈頭側の大動脈であることが判明し,穿孔部を直接縫合して止血を行った.膵嚢胞は膵頭十二指腸切除術により摘出した.
膵嚢胞内出血の症例は最近報告例が増加しているが,大動脈に穿通していた症例は本邦で初めてであり,診断及び治療に苦慮したので若干の考察を加えて報告した.
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© 日本臨床外科学会
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