抄録
極めて稀な,膵尾部内副脾の嚢胞形成例を経験したので報告する.症例は28歳,男性.上腹部痛・背部痛を主訴として来院.入院時理学的所見では右上腹部に圧痛を認めたが腫瘤は触知せず.血液検査は著変無し.腹部CTおよび超音波検査で膵尾部に一部石灰化を伴った,表面平滑な単房性嚢胞を認めた. ERPでは膵管は狭窄・拡張ともにみられず,膵管と嚢胞との交通も認められなかった.膵嚢胞の診断のもとに開腹すると,膵尾部に,非薄化した膵実質に覆われた直径約25mmの嚢胞を認め,膵尾部切除術を施行した.嚢胞の内容は薄茶色の液体で,寄生虫,毛髪,細菌を認めず, amylaseは低値であった.組織学的に膵尾部内の類表皮嚢胞で,嚢胞周囲に脾組織が認められ,嚢胞を形成した膵尾部内副脾と診断された.副脾は剖検例の約10%にみられ,その約20%が膵尾部にみられ,稀なものではないが,嚢胞形成例は世界で4例目である.