1992 年 53 巻 7 号 p. 1706-1711
馬蹄腎合併腹部大動脈瘤の2例を報告した. 66歳と75歳の男性であり, 2例とも他疾患の加療中に腹部腫瘤を指摘されて来院した.超音波, CT,血管造影などの検査によって腹部大動脈瘤が証明され,同時にその腹側に騎乗するように馬蹄腎の存在が認められた.大動脈瘤は大動脈分岐部に達していたが, 2例とも腎峡部を切離することなく処置することができた.通常の血管支配のほかに異常腎動脈が数本分布していたが,これらは術前検査によっては完全に同定することはできなかった.第1例では腎動脈を再建したが,第2例では分布範囲が下極の一部に限局していたため結紮・切離した.手術に際しては,腎峡部の切離の必要性の有無,腎血管の処置の2点が問題になるが,最終的な判断は術中に下さねばならないことが稀ではないので,いろいろな可能性を考慮して充分な準備を整えたうえで手術に臨むことが肝要と思われた.