抄録
最近5年間に当教室では31例の胸水貯溜原発性肺癌症を経験した.全例に胸水の細胞診が施行されており,胸水細胞診陰性群18例,陽性群13例であった.両群の予後を比較検討した.陰性群・陽性群とも5生例はなくともに予後不良であり,両群の予後に有意差を認めなかった.陰性群の手術例においては胸膜の病理組織学的所見から,非手術例においては画像診断より癌性胸膜炎の有無を検討したところ,陰性群18例のうち少なくとも7例の癌性胸膜炎症例が確認でき,陰性群の予後不良の原因としてfalse negativeの癌性胸膜炎症例の混在の可能性が推考された.組織型が腺癌で無気肺,肺炎等の併存病変を認めず,胸膜に接して発生した胸水細胞診陰性例の場合false negativeあるいは非癌性胸水を伴った癌性胸膜炎症例の可能性が高い.また肺門型あるいは肺門リンパ節転移例で細胞診陰性の胸水貯溜をみた場合には,大血管浸潤の可能性に注意を払う必要がある.