日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
乳癌患者の術前術後における脂肪肝の発生に関する臨床的検討
特に内分泌化学療法との関連を中心に
志村 賢範鈴木 秀塚本 剛真田 正雄大森 敏生市川 千秋由佐 俊和
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 54 巻 10 号 p. 2490-2495

詳細
抄録

乳癌症例における脂肪肝の合併頻度を肥満,閉経,投与薬剤(特にTamoxifen)との関係より臨床的に検討した. 1986年10月より1992年3月までに当科で手術された乳癌症例のうちで,腹部超音波 (US) あるいはComputed Tomography (CT) が施行された75例を対象とした.術前の脂肪肝合併頻度は19.7%であったが,術後は63.7%と高率に認められた (p<0,01). 次に脂肪肝合併頻度を肥満との関係でみると,術前は肥満群36.8%と非肥満群13,0%に比してやや高い傾向にあったが,術後は肥満群64,7%, 非肥満群65.9%と共に上昇し両群間に差は認められなかった.閉経との関係では,全く差は認めなかった.投与薬剤との関係ではTamoxifen投与群66.7%, 非投与群40.0%で有意にTamoxifen投与群で高かった (p<0.05). 以上より,乳癌症例の術後には脂肪肝が高頻度に認められ,その詳細な機序は不明であるが,ひとつの因子としてTamoxifen投与の関与の可能性が示唆された.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top