抄録
症例は43歳女性.突然の腹痛,腹満で受診した.来院時の腹部X線では左下腹部に著明に拡張したS状結腸と思われるコンマ状のガス像を認め,注腸X線検査ではS状結腸でのバリウムの途切れとbird beak signを認めたため, S状結腸軸捻症の診断で開腹術を施行した.手術所見ではS状結腸には異常はなく,著明に拡張した盲腸が上行結腸下端を中心に反時計回りに360°回転し,盲腸軸捻転症であることが判明した.腸管壊死はなく,長い移動盲腸症を認めたので捻転した盲腸を整復した後,盲腸と壁側腹膜の固定術を施行した.術後経過は良好であり現在まで再発はない.本症は比較的まれな疾患で,術前診断は困難である.腸管壊死が認められなかった自験例では整復術兼固定術で良好な結果が得られた.