日本臨床外科医学会雑誌
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S状結腸切除を行った偽膜性大腸炎の1例
中川 国利土屋 誉桃野 哲佐藤 寿雄
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キーワード: 偽膜性大腸炎
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1993 年 54 巻 2 号 p. 466-470

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抄録
偽膜性大腸炎症例の多くは,保存的治療で治癒する.しかし,診断が遅れた例では,穿孔,狭窄などの合併症にて,外科的治療を要する例がある.最近われわれは,低蛋白血症にてS状結腸を切除した,偽膜性大腸炎の1例を経験したので報告する.症例は45歳の女性で,上気道炎にて近医より抗生剤を投与された,服用後,下痢が生じ,以後5ヵ月間にわたり,種々の抗生剤や止瀉剤を投与された.次第に,粘血便を混じた下痢や下腹部痛が著明となった.注腸造影ではS状結腸の伸展不良を,内視鏡検査では粘膜の発赤・腫脹,膿苔の付着を認めた.またTc-アルプミンシンチでS状結腸からの蛋白漏出を認めたため,蛋白漏出性腸症としてS状結腸を切除した.しかし,切除標本の病理組織学的検査では,偽膜性大腸炎であった.以上より,抗生剤投与中および投与直後に下痢が生じた例では,偽膜性大腸炎を疑い,より早期に適切なる治療を行う必要がある.
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