症例は54歳男性で,主訴は発熱と左上腹部痛である.血液生化学検査では赤沈の元進, CRP陽性を認めた.腹部超音波検査では肝左葉外側区に径2cmの境界明瞭,内部不均一な低エコー領域を認め,腹部単純CT検査では同部に低吸収腫瘍影,また造影CTでは周囲がリング状に造影される腫瘤影を認めた.悪性腫瘍を否定できず,肝左葉外側区部分切除術を施行したところ,外側下区域に直径2cmの境界明瞭な黄色の腫瘤が存在した.組織学的には膠原繊維の増生を伴う肉芽腫様の組織で形質細胞を中心とした炎症細胞の浸潤が強く, Inflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患はまれであり若干の文献的考察を加えて報告する.