日本臨床外科医学会雑誌
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胃静脈瘤の病態と治療に関する検討
近森 文夫高瀬 靖広深尾 立
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1994 年 55 巻 5 号 p. 1094-1100

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抄録

経皮経肝門脈造影(percutaneous transhepatic portography: PTP)を施行した胃静脈瘤38例を,噴門部静脈瘤(cardiac varices: Lg-c) 19例と穹窿部静脈瘤(fundic varices: Lg-f) 19例に分けて,門脈圧,肝性脳症の頻度,静脈瘤排血路の種類と頻度, 5% ethanolamine oleate with iopamidolを用いた硬化療法の治療効果について比較検討した.門脈圧は, Lg-c 348±36mmH2Oに比べて, Lg-fでは269±49mm H2Oと低く,肝性脳症の頻度は, Lg-c 0%に比べて, Lg-fでは32%と高かった. Lg-cの主要排血路は全例食道静脈瘤であったのに対して, Lg-fの主要排血路は, 84%が胃-腎静脈シャント, 16%が胃-心嚢・横隔静脈シャントであった.硬化療法による胃静脈瘤消失率は, Lg-c 95%に比ぺて, Lg-fでは7%と低率であった.以上から, Lg-cには硬化療法が適応となるが, Lg-fにはシャント血流を制御した治療法が妥当と思われた.

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