1994 年 55 巻 5 号 p. 1115-1118
肝細胞癌の診断上,血管造影における腫瘍濃染像は重要な所見であるが,腫瘍濃染陰性の肝細胞癌も散見され診断が困難なことがある. 1987年9月より91年9月までの4年間に当教室で経験した肝細胞癌切除症例は113例で7例 (6.8%) が血管造影上腫瘍濃染が陰性であった.血管造影上腫瘍濃染陰性の肝細胞癌は小型で高分化型が多いと言われているが,われわれの症例では7例中5例が最大径3cm以下の中分化型, 2例が最大径5cm以上の未分化型肝細胞癌で,最大径3cm以下でも必ずしも高分化型が多くないこと,また5cm以上では未分化型が多いという結果であった.また未分化型肝細胞癌は組織学的には腫瘍内血洞が未発達であること,浸潤性発育の形式をとり被膜の形成が認められないことが血管造影上腫瘍濃染陰性の原因と考えられた.