1994 年 55 巻 5 号 p. 1158-1162
症例は72歳の女性で白内障のため眼科を受診したところ,左前頸部の軽度膨隆を指摘され,当科へ紹介され入院となった.一般検血,血液生化学検査,甲状腺機能検査で異常を認めず,超音波検査, CT検査で左前頸部に上縦隔にまで及ぶ嚢胞を認めた.左上皮小体嚢胞を疑い手術を施行するも嚢胞は甲状腺と強固に癒着しており甲状腺との剥離は困難であり,嚢胞は甲状腺より発生したものと思われたため,嚢胞を含め甲状腺左葉切除術を行った.嚢胞内容液は無色透明で約50ml, PTHは10ng/mlと高値を示した.病理組織所見は,一層の立方上皮に囲まれた嚢胞で,嚢胞壁に小型円形核と明るい胞体を有する細胞を認め, PTH染色にて染色されたことより上皮小体嚢胞と診断した.