抄録
肝切除前後の肝再生におけるhuman hepatocyte growth factor (hHGF) の係わりやそのネットワークについて検討する目的で,肝切除例7例を対象とし,各症例の術前後のhHGF,及びinterleukin-6 (IL-6), interleukin-8 (IL-8) の血中濃度をELISA法にて測定した.更に,血中のエンドトキシンをエンドスペシー法にて測定した.肝切除前後のhHGF, IL-6, IL-8の経時的変化をみると,まずIL-6, IL-8が肝切除前後から術直後にピークに達し速やかに低下するのに対し, hHGFはやや遅れて第1病日に最高値に達しその後徐々に低下する傾向が認められた.エンドトキシンは全経過中検出されなかった.肝硬変合併の有無及び肝切除範囲の多寡によるhHGFの変動の差異は認めなかった. hHGFとIL-6の経時的推移では, IL-6のピークから平均15時間後にhHGFがピークに達していた. IL-6がhHGFの産生に関与している可能性が示唆された.