2020 年 81 巻 4 号 p. 693-697
症例は74歳,男性.上部消化管内視鏡で胃体下部大彎に2型病変を認め,病変周囲は粘膜下が隆起し生検でtub1であった.CTでは胆嚢が壁肥厚を伴って腫大し連続して肝臍部から胃前庭部に低吸収域を認め,「胆嚢癌の胃浸潤」,「胃癌の周囲浸潤」,「胆嚢炎による胃壁膿瘍と胃癌の併存」との鑑別に迷った.抗菌薬治療を先行するとCTで胃の低吸収域は縮小,胃癌も粘膜下隆起が軽減し0-II c型となっていた.胆嚢炎による続発性胃壁膿瘍と胃癌併存と診断し,幽門側胃切除術+胆嚢摘出術を行った.病理所見は,T1bN0の胃癌と,近傍に漿膜~固有筋層まで膿瘍形成を認め,胆嚢は膿瘍を伴う急性胆嚢炎の所見で悪性所見を認めなかった.胆嚢炎による続発性胃壁膿瘍は稀な病態であり,さらに近傍に胃癌が併存するという稀少例を経験した.抗菌薬治療先行により胃癌の正確な術前診断も可能であった.