日本臨床外科医学会雑誌
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乳癌における乳管内進展巣の検討
今村 洋芳賀 駿介清水 忠夫渡辺 修小林 浩司木下 淳南雲 浩梶原 哲郎
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1995 年 56 巻 4 号 p. 688-692

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抄録

乳房温存療法における乳腺部分切除の適切な切除範囲を知る目的で,浸潤性乳管癌に認められる乳管内進展巣(DS)のひろがりを検討した.浸潤性乳管癌50例を対象とし,癌巣の浸潤部とDSとを区別し腫瘍構築図を作成, DSのひろがりにより,DSを認めない(-)群, 1~10mmまでの範囲で認める(+)群, 11mm以上までおよぶ(++)群に分け臨床病理学的事項との関係をみた.さらにDS (+), (++)各群で浸潤部周囲のDS量を評価し, DSのひろがりとの関係について検討した. (1) DS (-)群は16例, DS (+)群は20例, DS (++)群は14例であった. (2)各群と年齢,組織型,脂肪浸潤,リンパ管侵襲などの臨床病理学的事項との間には特に関係はなかった. (3) DS (+)群では35.0% (7/20例), DS (++)群では64.3% (9/14例)に浸潤部周囲の豊富なDSの存在を認めた.以上の結果より浸潤部周囲の乳管内進展巣が豊富なものは癌の広範囲な進展が示唆され,乳房温存療法に対しては慎重に対処すべきと考えられる.

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