日本臨床外科医学会雑誌
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多変量解析をもちいたt3乳癌の予後因子の検討
桧垣 健二塩崎 滋弘花岡 奉憲井上 秀樹森山 裕煕小野田 正大野 聡二宮 基樹池田 俊行小林 直広岡村 進介朝倉 晃
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1995 年 56 巻 4 号 p. 693-698

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抄録

t3乳癌は, t2乳癌に比べその予後は不良である.その原因を調べる目的で, 1980年1月より1992年12月までに当科で手術が施行されたt3乳癌89例を対象とし,予後不良因子について検討した.予後因子としては,閉経状態,腫瘤径,遠隔転移の有無, n-number, 病理組織型,組織波及度,腫瘍および真皮のリンパ管侵襲度,静脈侵襲度,皮膚への浸潤の深さ,皮膚への浸潤の拡がり,炎症細胞の発現,リンパ節転移数,手術術式,リンパ節郭清度, ER, PgR, 術後治療の18因子を選択した.
これらの因子の解析はCoxの比例ハザードモデルをSAS (Statistical Analysis System) を使用して,変数後退法により行った.その結果,腫瘤径,遠隔転移の有無,リンパ節転移数,組織型,腫瘍の静脈侵襲度の順に予後因子としての重みを認めた.以上より, t3乳癌の予後が不良な原因は,癌が皮膚や筋肉に浸潤していること自体によるものではなく,t3乳癌はt2乳癌がさらに進行した形としてとらえるのが妥当であると考えられた.

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