日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
腹部大動脈瘤手術における下腸間膜動脈再建の検討
浦山 博川上 健吾笠島 史成小杉 郁子田畑 茂喜渡辺 洋宇
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 56 巻 4 号 p. 699-701

詳細
抄録

腹部大動脈瘤術後の虚血性大腸炎の予防としての下腸間膜動脈の再建は常に施行されるべきか否かの比較検討を行った.過去5年間に手術を施行した非破裂性腹部大動脈瘤50例のうち下腸間膜動脈の閉塞していた4例を除く46例にて比較した.前半の27例では人工血管による再建が終了した時点で下腸間膜動脈の断端圧測定とドプラー血流計によるS状結腸間膜の血流測定を行い,9例に下腸間膜動脈を再建した.後半の19例では全例において下腸間膜動脈の再建を行った.選択的と恒常的再建群において手術侵襲や術後の経過を比較した.選択的と恒常的下腸間膜動脈再建群の背景において年齢,性別,開腹手術の既往,内腸骨動脈の血流温存に有意な差は認めなかった.選択的再建群と恒常的再建群において術中出血量,手術時間に有意な差異は認めなかった.虚血性大腸炎はいずれの群においても認めなかった.術後合併症例を除いた選択的再建群と恒常的再建群において経口摂取や退院までの日数に有意な差異は認めなかった.恒常的下腸間膜動脈再建の有用性の立証には更なる検討が必要であった.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top