日本臨床外科医学会雑誌
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食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法施行後の食道癌の1例
中島 清一宗田 滋夫吉川 幸伸奥野 慎一郎森 匡栗原 陽次郎
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1995 年 56 巻 4 号 p. 718-722

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抄録

肝硬変に伴う食道静脈瘤に対し内視鏡的硬化療法(以下EIS)の既往を持つ65歳の男性で中部食道の早期癌に対し手術を施行した.組織学的には腫瘍は粘膜内に限局していた.原発部位については粘膜筋板はよく保たれていたが下部食道ではEISのためにほぼ消失していた.従って本症例においてはEISと発癌との因果関係はないと判断した.
自験例を含めたわが国での同様の15の報告例は全例男性で平均年齢は58.4歳,硬化剤の種類や量,注入法,発癌までの期間やstageに特定の傾向はなかった.早期の5例はEIS後3~6カ月毎にfollowされており予後良好であった.
EISと発癌との関連を完全に否定する事は依然困難であるが, EISを施行されている患者に対しては食道癌の見逃しのないよう厳重な経過観察が重要であると思われた.

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