日本臨床外科医学会雑誌
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幽門狭窄症状で発症した原発性十二指腸球部進行癌の1例
鳥 正幸山崎 芳郎桑田 圭司大野 喜代志橋本 純平山崎 元長岡 真希夫山本 重孝山口 高広坂口 太一土田 忍長阪 重雄李 千万小林 晏小武内 優
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1995 年 56 巻 4 号 p. 756-761

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抄録

幽門狭窄症状で発症した原発性十二指腸球部進行癌の1手術例を文献的考察を加え報告する.症例は65歳の女性で,主訴は上腹部膨満感であった.上部消化管造影で幽門狭窄の所見を認め,上部消化管内視鏡では十二指腸球部後壁にBorrmann 1型の隆起性病変が存在,腫瘤は幽門輪に進展騎乗していた.生検にてPapanicolaou class Vが証明された.腹部CTでは十二指腸壁の肥厚を認めたが,リンパ節の腫脹は認めなかった.以上より原発性十二指腸癌が強く疑われたために胃十二指腸球部切除術を施行,再建はBillroth II法で行った.切除標本肉眼的所見では腫瘤は6.0×6.0cm大の隆起性病変で病理組織学的にwell-differentiated pappillo-tubular adenocarcinoma and mucinous adenocarcinomaと判明した.十二指腸癌の報告例は珍しいが,自験例は幽門狭窄症状で発症した稀な球部癌であり,本症の早期発見ならびに良好な予後を得るための適切な手術術式の選択を検討する上で貴重な症例であった.

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