日本臨床外科医学会雑誌
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Meckel憩室に起因した成人絞扼性イレウスの1例
出口 雅浩伊藤 重彦岡田 代吉林 宗榮小林 誠博澤田 貴裕大江 久圀辻野 直之
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1995 年 56 巻 4 号 p. 772-775

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抄録

Meckel憩室は剖検例の1~2%に見られる消化管の奇形であるが症状を呈するものは8~22%である.その大半は小児期に発症し(80~90%)成人発症例は稀である.今回われわれはMeckel憩室に起因した成人絞扼性イレウスを経験したので報告する.症例は50歳男性.イレウス症状を主訴に入院.入院時所見にて腹膜刺激症状はなく,画像診断上も小腸の拡張像のみで,腹水貯留は見られなかった.保存的治療を施行したところ,翌日腹膜刺激症状出現した為,緊急開腹手術施行.開腹所見にて,回腸末端より約50cm口側の腸管がループを形成し捻転・壊死を起こしており, Meckel憩室による絞扼が原因であった.憩室には索状物はなく,炎症を来した憩室が腸管膜に癒着し伸展した憩室の頸部が回腸のループの基部を絞扼したものと考えた.術後経過は良好で術後30日目に退院した.昭和55年以降当院におけるイレウス手術症例230例中,成人のMeckelによるイレウス症例は本例のみであった.

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