1995 年 56 巻 4 号 p. 811-815
経時的追跡により最終的に膵癌と鑑別できた腫瘤形成性膵炎の1例を経験したので報告する.症例は61歳男性で,黄疸を主訴に入院した.腫瘍マーカーはいずれも正常値であったが,入院時に施行したPTGBD (Percutaneous Transhepatic GB Drainage), ERCP (Endoscopic Retrograde Cholangio-pancreatography), 血管造影等の各種画像診断はいずれも膵頭部癌を示唆するものであった.しかしながら,経時的に行った胆道造影と血管造影ではいずれも異常所見の改善をみたために,腫瘤形成性膵炎(膵癌類似膵炎)と診断した.また本例にはCTでは偶然に左の腎癌の合併が発見されたため腎摘を施行した.腫瘤形成性膵炎と膵癌の鑑別法には未だ確定的なものはないが,各種腫瘍マーカーや画像診断法の総合的かつ経時的な変化を捉えることが有力な手がかりとなり得,手術侵襲をさけることができる可能性があることを本論文で示した.