1995 年 56 巻 4 号 p. 830-834
60歳男性で,腹部腫瘤・左下肢のシビレを主訴に来院.左下腹部に約20cm・境界明瞭・非可動性の腫瘤を触知し,腫瘤は鼠径靱帯を越えて左大腿前面に及んでいた.左下肢L1~L4領域の知覚異常がみられた.血液検査ではNSE値が高く,超音波検査では内部がまだらの高エコーを有する実質性腫瘤で,造影CTでは多結節性で皮膜が強く,内部は軽度にenhanceされた.第1回手術では,左L2,3,4神経根が腫瘤を貫通し大腿神経へとつながっており,神経原発と考え大腿神経合併・腫瘍全摘術を行った.術後10カ月には局所再発のため再手術を,さらに7カ月後には再々手術を行い,化学療法を追加した.組織学的には大小不同のspindle~ovalな細胞の増生で,myxomatousな変化が強く,lobulationを認め,またpalisading patternもみられた.腫瘍細胞には異型性・多型性がみられ核分裂像も散見され,悪性神経鞘腫と診断された.