日本臨床外科医学会雑誌
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特発性大網捻転症の1例
建部 茂橘 球星野 和義川口 廣樹岸本 宏之
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1995 年 56 巻 4 号 p. 835-839

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抄録

特発性大網捻転症は比較的稀な疾患で,本邦報告例は36例にすぎない.今回われわれは,本症の1例を経験したのでその概要を報告し,自験例を含め,本邦37例についての検討を行った.
症例は63歳男性で,近医にて急性虫垂炎の診断下に開腹手術を行ったところ,血性腹水を認めたためそのまま閉腹し,救急車で当院へ搬送された.全身麻酔下に開腹したところ,大網が時計軸方向に7回捻転しており,特発性大網捻転症と診断し,大網を捻転部で切離した.
本邦報告例37例の検討では,主訴は右下腹部痛が24人(67%)と最も多かった.また,術前診断は急性虫垂炎が28人(80%)と最も多く,術前に正診された症例はなかった.本症の術前診断は難しいと思われるが,右下腹部痛を主訴とすることが多いため,急性虫垂炎が疑われる場合,本症も鑑別診断の1つにあげる必要があると思われた.

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