抄録
若年者の急性虫垂炎術後に発症した肺塞栓症を経験したので報告する.症例は14歳,男性,右下腹部痛および発熱を主訴として来院した.急性虫垂炎と診断し虫垂切除術を行った.術後第1病日に歩行を開始した直後に強度の胸痛を来たした.肺血流シンチグラフィーおよび肺動脈造影を直ちに施行し,肺塞栓症と診断された.血栓溶解療法を行い救命し得た.術後,先天性凝固異常を疑ったが, Protein C, Protein S活性などに異常は認められなかった.退院後約6カ月になるが再発なく健康に生活している.術後肺塞栓は,若年者で手術侵襲が小さくとも念頭に置くべきであると考えられたので報告する.