1997 年 58 巻 11 号 p. 2721-2726
肛囲膿瘍から発生したと思われるFournier's gangreneを経験したので報告する.症例は63歳,男性で,会陰部痛,陰のう腫張を主訴として,発症後11日目に当院転院となり切開開放ドレナージ術とデブリッドマンを行い救命しえた.治療としては以下の点に注意して行うべきと判断された.(1)一刻も早く発見し,躊躇することなく徹底的に十分な切開開放ドレナージそしてデブリッドマンを行う,(2)抗生物質は初めは広域スペクトラムのものを用い,培養の結果を基にして,感受性のある種類にすぐに変える必要があるが,抗生物質の投与により菌交代がおこるために細菌検査を頻回に行う,(3)患者はショックや糖尿病等の基礎疾患も合併していることも多いために併存疾患の治療を全身状態の管理と合わせて行う.