日本臨床外科医学会雑誌
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多発早期胃癌の臨床病理学的特徴からみた治療法の選択
谷 雅夫竹下 公矢佐伯 伊知郎林 政澤本田 徹斎藤 直也遠藤 光夫
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1997 年 58 巻 2 号 p. 284-290

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抄録

多発早期胃癌の治療法を,最近の15年間に当科で切除された初発多発早期胃癌61例(早期胃癌総切除例の11.7%,副病巣数82)を対象として,その臨床病理学的特徴から検討した.男性48例(平均年齢64.2歳),女性13例(平均年齢60.9歳)で,占居部位は副病巣82病巣中41病巣(50%)が主病巣と同領域であった.主・副病巣の組み合わせは,陥凹型・陥凹型が28例と最も多く,主病巣は61例中39例(64%)が高分化型で,うち37例は副病巣も高分化型であった.副病巣82病巣中28病巣(34%)は術前見逃された病巣で,多くはM領域に認められ,陥凹型16病巣,平坦型10病巣で,多くは1cm以下であった.高齢,男性,同肉眼型,高分化型が多発早期胃癌の特徴で,脈管侵襲やリンパ節転移の頻度は単発早期胃癌に比して同等あるいはそれ以下であった.多発早期胃癌の治療は,切除術式では術式の拡大の必要性はなく,内視鏡治療では個々の病巣が適応範囲内であれば後の厳重な経過観察を条件として施行して良いと考えられた.

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