1997 年 58 巻 2 号 p. 415-418
鼻腔内悪性黒色腫の診断2年後に発生した孤立性小腸転移の切除例を経験したので報告する.症例は, 59歳男性.主訴は上腹部痛. 1992年に当院耳鼻科で右鼻腔内悪性黒色腫を診断.化学療法を施行され外来経過観察中であった. 1994年11月6日上腹部痛が出現し当院内科を受診した.小腸イレウスの診断で入院し精査の結果,黒色腫の小腸転移が疑われ,手術目的にて外科転科となった.手術所見では十二指腸空腸曲より約360cmの部位に3cm大の腫瘤性病変を認めた.術中,全小腸を内視鏡にて検索したが他の病変はなく,小腸部分切除を行った.病理組織像では顆粒状の褐色色素を産生する腫瘍細胞が認められた.本邦の孤立性小腸転移は肺癌が最も多く,黒色腫は比較的少ないが黒色腫経過中の腹部症状の発現例では本症の存在を考慮し,選択的小腸造影を施行する必要がある.有効な化学療法が無い以上外科的切除が第一選択となる.