日本臨床外科医学会雑誌
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原発性回腸癌術後に両側卵巣転移再発した1例と空・回腸癌転移・再発例の集計
佐藤 美信丸田 守人黒水 丈次前田 耕太郎内海 俊明佐藤 昭二黒田 誠
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1997 年 58 巻 2 号 p. 457-460

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抄録

原発性回腸癌術後に両側卵巣転移した稀な1例を経験したので報告する.症例は54歳,女性で腹痛,嘔吐を主訴に来院した.腹部単純X線写真でイレウス像を認めたため,癒着性イレウスの診断で緊急入院した.保存的に治療したが腸閉塞を繰り返し,注腸造影で回腸腫瘍と診断,手術を施行し,回腸癌と診断された.術後14カ月目に腹水で入院し,卵巣腫瘍の診断で手術を施行した.術後の病理,免疫組織学的検討で回腸癌の卵巣転移と診断した.卵巣への転移経路は,初回手術の術中および病理学的所見から,リンパ行性,血行性転移が示唆された.原発性空・回腸癌の卵巣転移の報告は調べ得た限りでは現在まで4例で, 1989年から5年間における空回腸癌の本邦報告216例中, 0.9%と稀であった.卵巣転移は全空・回腸癌の平均年齢に比べ,より若年者の空・回腸癌例に発生しており,若年齢者では卵巣転移も念頭に入れて経過観察を行うことが必要と考えられた.

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