1998 年 59 巻 1 号 p. 147-149
腸閉塞をきたした回腸結核症を経験したので報告する.
症例は38歳男性. 3年前より下腹部痛,腹満感が出現し軽快,再燃を繰り返していたが,今回腹痛が強く入院となった.保存的に加療したが,入院後も嘔吐をともなう腸閉塞症状を繰り返しさらに高熱が持続した.抗結核剤投与により,速やかに解熱したが再び腸閉塞となり開腹手術施行した.回腸下部の閉塞部は全周性の潰瘍瘢痕で,ほかに輪状潰瘍を多数認め回盲部切除術を施行した.病理組織検査で腸結核と確定診断された.一般的に腸結核は抗結核剤による保存的治療によく反応するとされるが,小腸病変では潰瘍が治癒し瘢痕化して腸閉塞症状の悪化をきたすことがあり,慎重な経過観察が必要と考えられた.