日本臨床外科学会雑誌
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59 巻, 1 号
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  • 新宮 聖士, 小林 信や, 春日 好雄, 藤森 実, 伊藤 研一, 浜 善久, 天野 純, 横山 史朗
    1998 年 59 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当科では甲状腺未分化癌に対する治療として,腫瘍の増大による窒息を回避するために,まず局所のコントロール(腫瘍可及的摘除あるいは試験切除に加え放射線照射)を行い,その後化学療法を行っている.今回,可及的に腫瘍を摘除し得た群(摘除群)と試験切除にとどめた群(非摘除群)の治療成績を比較検討した. 1980年1月から1995年12月までの16年間に当科で治療を行った初発甲状腺癌668例中組織学的に未分化癌と診断された21例(3.1%)を対象とした.内訳は摘除群10例,非摘除群11例であった.摘除群1年生存率10.0%,最長生存13カ月,非摘除群1年生存率27,3%,最長生存34カ月であった.有意差は認めないが, 1年以上の長期生存例は非摘除群に多く認められた.したがって,現時点における本腫瘍に対する効果的な治療法は,診断を兼ねた試験切除後,すみやかに放射線照射,化学療法を行うことであり,拡大手術は行うべきでないと考えられた.
  • 永野 篤, 清水 哲, 有田 英二, 富田 康彦, 松川 博史, 藤沢 順, 稲葉 將陽, 今田 敏夫
    1998 年 59 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前乳癌32症例を対象に,血漿中MMP-1. 2, 3, 9およびTIMP-1, 2をone step sandwich EIA法にて測定し,その臨床的意義について健常女性50例の対照群と比較し検討した.両群の平均値の比較では, MMP-1, MMP-3は差がなかったが, MMP-2, MMP-9は乳癌群において低値であった(p=0.0032, p=0.044).また, TIMP-1も乳癌群で有意に低値であった(p<0.0001).そこでMMPとTIMPの量的バランスを反映すると考えられる, MMPの濃度合計をTIMPの濃度合計で除したMMPs/TIMPs濃度比を算出し,両群を比較検討した結果,乳癌群は0.857±0.261,健常群は0.776±0.182で,乳癌群で有意に高値であった.さらに乳癌群のTIMP-1はリンパ管侵襲度に負の相関を示し, MMPs/TIMPs濃度比はリンパ管侵襲度に正相関した.以上より乳癌患者の血漿において, TIMP-1およびMMPs/TIMPsは乳癌のリンパ管侵襲度を反映する可能性が示唆された.
  • 土井 美幸, 浅越 辰男, 花谷 勇治, 三吉 博, 蓮見 直彦, 長岡 信彦, 葉梨 圭美, 小平 進
    1998 年 59 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌は骨転移の好発する悪性腫瘍であるが,骨転移後の長期生存例も認められる.適切な治療法を選択すればQOLの改善と延命効果が期待でき,その取り扱いは重要である.
    1971年から26年間に当科で経験した原発性乳癌540症例中,骨転移を来した60症例について臨床病理学的検討を行った.その結果,骨転移をおこしやすい症例は, (1)腫瘍径が小さい場合,充実腺管癌・硬癌, (2)乳頭腺管癌では,腫瘍径の大きい症例, (3) n0かつ脈管侵襲陰性の場合,充実腺管癌,の3点に集約された.また充実腺管癌では,骨転移を来しやすいが限局した状態で発見された症例が多く,転移後の生存期間も長いことより,特に術後5年以内における骨転移に対する精査が肝要であると考えられた.
  • 麻賀 太郎, 吉田 明, 河原 悟, 増澤 千尋, 北村 和則
    1998 年 59 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腋窩リンパ節(Ax)転移の有無は現在最も重要な予後因子であるが,胸骨傍リンパ節(Ps)転移の予後因子としての意義は明確にされていない.そこでPs転移の予後因子としての意義を検討した.対象はPsより遠位の郭清が行われた267例である.検討方法はまずPs転移個数別の生存率を比較した.さらにPs転移の予後に及ぼす寄与度をAx転移,腫瘍径,組織学的分化度,リンパ管侵襲, ER, p53, c-erbB2の蛋白発現を説明変数として多変量解析(Coxモデル)により検討した. Ps転移個数をなし, 1個のみ, 2個以上の3群にわけて生存率を比較するとPs〓2, Ps=1, Ps=0の順に3群間で有意差(p<0.01)を認めた.またAx転移個数をなし, 1個~3個, 4個以上にわけて, Ps転移個数別に分けた(Ps=0 vs Ps〓1)生存率でもPs=0の生存率はPs〓1より有意に良好であった.多変量解析ではPs転移が最も予後に及ぼす因子であった.以上からPs転移の有無を知ることは予後の予測や補助化学療法の治療方針決定に有用である.
  • 渡辺 俊一, 田中 紘輝, 豊平 均, 下川 新二, 川島 淳宏, 森山 由紀則, 浜田 信男, 岩村 弘志, 増田 宏, 山岡 章浩, 平 ...
    1998 年 59 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    心大血管病変を合併した悪性腫瘍症例の8例に同時手術を行った.悪性腫瘍は,肺癌3例,大腸癌2例,胃癌2例,肝臓癌1例で,合併心大血管病変は,虚血性心疾患3例,心臓弁膜症2例,腹部大動脈瘤2例,胸部大動脈瘤1例であった.同時手術の順番は,原則として血行動態の改善確保を優先し,悪性腫瘍の根治性を損なわないように配慮したが,進行癌症例と手術野の都合では悪性腫瘍手術を先行した.到達切開法は,同一視野手術以外では,感染予防から非連続性到達法とし,体外循環併用症例では手術侵襲の軽減に努めた.同時手術の手術時間や出血量はほぼ満足でき,術後合併症も無いことから手術侵襲は認容できるものであった.全例社会復帰し,最長観察期間は54カ月(平均24カ月)で,悪性腫瘍の再発徴候は無く根治術と思われた.以上より心大血管病変を合併し,悪性腫瘍の根治性が期待できる症例では,手術侵襲に耐えれば,同時手術が好ましいと思われた.
  • 遠藤 公人, 大内 清昭, 藤谷 恒明, 菅原 暢, 小野 日出麿, 神山 泰彦, 角川 陽一郎, 三国 潤一
    1998 年 59 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1967年から1994年における同時性多発胃癌176例について単発例との比較のうえで臨床病理学的な比較検討を行った.多発癌の発生頻度は6.3%であった.多発例は単発例より高齢であり,男性優位であった.主病変,副病変とも胃体部以下にある例が61.9%を占め, 32例ではC領域とA領域に病変を認めた.多発早期癌の107例では,単発例に比べ肉眼型では隆起型が多く,組織型では分化型が多かった.肉眼型は主病変,副病変とも同型の肉眼型が64.8%であった.リンパ節転移は単発例に比較して有意に転移陽性が少なかった.累積生存率は両群間で有意差は認めなかったが,早期癌では多発例で不良であった.しかし,相対5年生存率では差はみられず,多発例には高齢者と男性が多いことが予後に影響していると考えられた.
    常に多発癌を考慮した治療方針の決定と術後の残胃の慎重なフォローアップが重要である.
  • 森山 裕煕, 二宮 基樹, 朝倉 晃, 小野田 正, 塩崎 滋弘, 大野 聡, 檜垣 健二, 池田 俊行, 小林 直広, 岡村 進介
    1998 年 59 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    20年間に当科で切除された初発胃粘膜内癌518症例(573病変)のうち,脈管侵襲陽性例につき臨床病理学的に検討した. 1) ly(+)を17例(3.0%), v(+)を3例(0.5%)に認めた. 2)占居部位は, 1例を除きすべてMまたはA領域であった. 3)肉眼型は, 2例を除きすべて陥凹型あるいはこれを含む混合型であった. 4)組織型は, 1例にpapをみたほかは,すべてsigまたはtub1, 2いずれかであったが,分化型と未分化型とでは有意差はみられなかった. 5)腫瘍最大径では, n(+)は1.5cmから, ly(+)ではさらに小さい0.7cmからみられた. 6) n(+)は12例に認められ,このうち7例はly(+)であった.一方, ly(-)でも3例がn(+)であり,いずれも陥凹成分を含んでいた. 7)予後は,他病死で2例,骨転移で1例を失ったほかは全例生存している.以上より,粘膜内癌といえども,陥凹型や混合型では,予防的リンパ節郭清の必要性があると考えられた.
  • 田中 邦哉, 鬼頭 文彦, 金村 栄秀, 松尾 恵五, 石山 暁, 小尾 芳郎, 福島 恒男
    1998 年 59 巻 1 号 p. 42-51
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    75歳以上の胃癌,大腸癌切除例を対象に, 80歳未満の高齢群(胃癌37例,大腸癌43例)と80歳以上の超高齢群(それぞれ19例, 37例)で臨床成績を比較した.
    胃癌,大腸癌ともに高齢で手術侵襲は高度であったが,術後合併症は胃癌では高齢(64.9%)に比較し,超高齢 (94.7%)が高率で(p<0.05),全身合併症のうち呼吸器合併症が高率であった(超高齢:高齢=73.7(%): 37.8(%)) (p<0.05).大腸癌では全身合併症が超高齢で高率であった(超高齢:高齢=73.0(%): 48.8(%)) (p<0.05).累積生存率はいずれも超高齢が不良であり,とくに呼吸器合併症例で不良であった.胃癌の超高齢呼吸器合併症例では非合併例に比較し,郭清リンパ節個数が多く(p<0.05),他臓器合併切除が高率で,大腸癌では上腹部操作例が多かった(p<0.05).
    以上から80歳以上胃癌ではリンパ節郭清,他臓器合併切除を,大腸癌では上腹部操作を控えた術式を選択すべきと思われた.
  • 藤岡 秀一, 筒井 光広, 佐々木 壽英, 田中 乙雄, 梨本 篤, 土屋 嘉昭, 佐野 宗明, 牧野 春彦
    1998 年 59 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹膜播種陽性大腸癌のうち根治Bであった37例を臨床的に検討し,予後規定因子を解析した.全体の5年生存率は31.4%で,多変量解析の結果から予後規定因子は“リンパ節転移がn2以下”と“腹膜播種の個数が3個以内”の2因子であり,これら2因子を満たす18例の5年生存率は56.8%と良好であった.
    またP1とP2をそれぞれ腹膜播種の個数が3個以内と4個以上の群に分けて比較すると, P1では2群に有意差を認めなかったが, P2では3個以下の群で有意に予後が良好であり, P1全体と比較しても有意差を認めなかった.したがって予後を考慮した場合,遠隔腹膜にある播種のうち個数が3個以内のものはP1に含め,遠隔腹膜の4個以上の播種のうち切除可能なものをP2とするのが妥当であると考えられた.
  • 谷山 新次, 金城 和夫, 小野 正人, 新井 竜夫, 白井 芳則, 杉藤 正典, 竜 崇正
    1998 年 59 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    下部直腸癌における直腸傍リンパ節転移の画像診断能の向上を目的として,非転移症例(N(-)群: 23例),転移症例(N(+)群: 21例)に分類し摘出リンパ節の組織学的検討から直腸傍リンパ節の大きさ別出現頻度および転移度を求め比較検討した.また, CT診断に応用し大きさ別診断能を検討した.リンパ節出現頻度は, N(-)群では5mm以上でリンパ節は少なくなり, 10mm以上は認めなかった. N(+)群の転移リンパ節の出現頻度は5mmと比較し6mmで有意に高かった(p<0.01). N(-)群/N(+)群間の比較では,出現頻度は5mm 30/30個, 6mm 6/36個でN(+)群は6mmで有意に高かった(p<0.01).症例毎の最大径リンパ節は, N(-)群/N(+)群間で5mm 4/1例, 6mm 3/6例でありN(+)群で6mmの症例が有意に多かった(p<0.01). CT診断は, 5mm以上の診断基準でaccuracy 61.3%, sensitivity 59.1%, specificity 63.6%であり, 6mm以上では各々72.7%, 54.5%, 90.9%であった.以上より, N(+)群の直腸傍リンパ節は,大きさ6mm以上で出現頻度および転移度が高く,画像診断への応用は診断能向上に有用であった.
  • 岩田 広治, 岩瀬 弘敬, 遠山 竜也, 原 泰夫, 大本 陽子, 小林 俊三
    1998 年 59 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性,右顎下部の急速増大する腫瘍を主訴に来院した.臨床所見, CT, MRIおよび血管造影にて悪性顎下腺腫瘍と診断し腫瘍切除術を施行した.しかし総頸動脈,内頸静脈への腫瘍浸潤のために,腫瘍の一部が切除不可能であった.切除腫瘍の大きさは17.6×10.7×9.5cmで,重量は960gであった.病理組織学的に悪性多形腺腫と診断され,残存腫瘍は53Gyの放射線照射によりわずかに縮小した.しかし術後74日目に超音波エコーにて心内腫瘍が発見され,心嚢水の細胞診で悪性腫瘍が同定されたことより,悪性多形腺腫の心筋内転移と診断された.その後の化学療法は効果なく,患者は残存腫瘍の増大と全身状態の悪化により,術後221日目に死亡した.心転移を来した悪性多形腺腫の非常に稀な1例である.
  • 大森 健, 宗田 滋夫, 橋本 純平, 古川 幸伸, 森 匡, 中根 茂, 大嶋 正人
    1998 年 59 巻 1 号 p. 70-74
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    骨外性間葉性軟骨肉腫(以下EMCS)は組織学的に未分化間葉細胞内に成熟した軟骨細胞が島状に存在する腫瘍である.放射線療法が著効した症例を経験したので報告する.患者は71歳,女性.主訴は頸部腫瘤.他院にて頸部悪性腫瘍の診断で平成8年7月15日腫瘍摘出術施行された.病理組織学的検査でEMCSと診断された.術後1カ月で再発を認め,急速に増大したため放射線療法目的に当科に紹介入院となった.
    入院時左頸部に巨大な腫瘍を認めCT, MRI上周囲組織(右頸動脈,頸静脈,気管)に浸潤しており摘出不能と判断した.放射線療法(計64Gy)施行後,腫瘍は著明に縮小したため11月19日残存腫瘍に対し腫瘍摘出術,甲状腺右葉合併切除術を施行した.摘出標本では未分化な細胞は認めず軟骨細胞のみ認められた.術後4カ月再発転移を認めていない.
  • 木原 実, 宮内 昭, 前田 昌純
    1998 年 59 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は透析歴13年の腎性副甲状腺機能亢進症の62歳男性.副甲状腺の内3腺は,術前画像検査や手術時に肉眼的に確認し得たが, 1腺(左下)は不明だったため甲状腺左葉切除を行った.術後,病理検査では切除甲状腺内に副甲状腺の存在が確認された.副甲状腺の個数や部位にはかなりの変異があり,これらを見逃すと症状の遺残や再発を来す.腎性副甲状腺機能亢進症においては一側で副甲状腺が一腺しか見つからず,胸腺内や甲状腺周囲を検索しても存在しない場合,同側の甲状腺葉切除も考慮すべきと思われた.
  • 朝戸 裕, 牛島 康栄, 原 彰男, 隈元 雄介, 亀井 秀作, 種田 靖久, 林 博隆
    1998 年 59 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    両側乳房の多発皮下腫瘤で発症した,結節性多発動脈炎の1例を経験したので報告する.
    症例は73歳の女性,主婦である.約1カ月前より38度台の発熱が出現しその後両側乳房の有痛性の腫瘤を自覚し,抗生剤と消炎鎮痛剤を内服したが軽快せず当院を受診した.両側の乳房に弾性やや硬の多発腫瘤を触知し,超音波エコー検査で皮下脂肪織内に高エコー性の腫瘤影が認められ,生検を行った.病理組織検査では皮下脂肪織内の中~小型動脈に全層性および血管周囲に広がる炎症像が見られ,浸潤細胞はリンパ球,マクロファージが主体で小数の好中球,好酸球と核debrisが見られ,フィブリノイド変性も一部にあり, polyarteritis nodosa (PN)疑い,組織学的病期分類(1988)のIII期(肉芽期)と診断された.他臓器病変の所見は無く,また乳房に限局したPNの本邦報告例5例の検討より,皮膚に限局した皮膚PNである可能性があると判断した.しかし今後全身型のPNに移行する可能性も有り,厳重な経過観察が必要である.
  • 奥村 輝, 徳田 裕, 太田 正敏, 田島 知郎, 安田 聖栄, 正津 晃
    1998 年 59 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    骨シンチグラフィー,全身骨X線検査にて陽性所見を認めず,全身positron emission tomography (PET)にて骨転移を診断しえた再発乳癌症例を経験したので報告する.症例は48歳女性で術後1年5カ月後に左鎖骨上窩リンパ節転移が確認された.胸部X線検査,頭部CT検査,腹部超音波検査,消化管精査,全身骨X線検査,骨シンチグラフィーを施行したが,頸部リンパ節腫大以外には異常所見は認めなかった.この症例に全身PETを施行したところ,左鎖骨上窩の異常集積像とは別に頸椎,胸椎,腰椎にも異常集積像が認められた.引き続いて施行したMRI検査では典型的な骨転移像が認められた.乳癌骨転移の診断に全身PETは有用であると考えられた.
  • 田中 賢一, 石田 常之, 白野 純子, 味木 徹夫, 中澤 健, 奥村 修一, 中村 哲也
    1998 年 59 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは腸腰筋に転移をきたした炎症性乳癌を経験したので報告する.
    症例は56歳女性, 1995年2月27日右炎症性乳癌にて定型乳房切断術施行.術後CEF療法3クール施行し,退院後通院治療していた.
    1995年8月頃より左腰部痛が出現し,超音波, CT, MRIにて後腹膜腔に腫瘤を指摘され入院.血管造影と併せて,乳癌の転移も否定はできなかったが,神経鞘腫または肉腫が最も疑われたため, 1995年10月9日腫瘤摘出術を施行した.手術所見では腸腰筋内に血腫を認め,明らかな腫瘍は認めず腸腰筋とともに血腫を切除した.
    病理学的検査では,腸腰筋への癌細胞の浸潤を認め,形態的に前回の乳癌標本と類似し,乳癌の腸腰筋転移と診断した.
    乳癌の骨格筋転移はまれで,調べ得た限りでは2例の報告を認めるのみである.
    後腹膜腫瘤の診断にあたっては,画像診断より総合的に行う必要があるが,悪性腫瘍の転移についても考慮にいれる必要があると考えられた.
  • 高見 実, 松本 潤, 大島 哲, 由里 樹生, 増子 宣雄, 南 智仁, 松峯 敬夫, 石澤 貢, 中村 恭二
    1998 年 59 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    きわめて稀な乳頭部に限局した浸潤性乳癌を経験したので報告する.症例は47歳女性.右乳頭の腫大と湿潤を主訴に来院.乳頭部に3.5cm大の腫瘍を認めるも,乳頭下には腫瘤を触知せず,乳頭部に限局した浸潤性乳癌と診断.手術は乳頭乳輪を含めた乳房円状部分切除術 (Bp (2cm)+Ax),いわゆるcentral quadrantectomyを施行.病理組織学的診断では乳頭腺管癌で乳頭部は癌細胞で占められ,乳輪下乳腺組織にわずかな乳管内進展を認めた.腋窩に1個のリンパ節転移があった.術後残存乳房に55Gyの照射を行った.今後乳頭乳輪形成術を予定している.
    乳頭部に限局した浸潤性乳癌はきわめて稀であり,これまでに3例の報告があるだけで, 2例に乳房切除術が, 1例に乳房部分切除術が施行されている.今回は乳房温存術の妥当性につき文献的考察を加え報告をした.
  • 時津 浩輔, 立花 秀一, 川上 万平, 折野 達彦, 長谷川 滋人, 佐々木 進次郎
    1998 年 59 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性咽喉頭炎または口腔底蜂巣炎からいわゆる降下性壊死性縦隔炎を併発した2症例に対し,積極的なドレナージ・洗浄療法を施行し治癒せしめえたので報告する.症例は59歳男性で,膿瘍は気管・気管分岐部周囲を取り囲み,右前上縦隔に塊状に形成され,下方は後縦隔に降下し,両側膿胸も伴っていた.他の1例は23歳男性で,顕著な気縦隔が特徴的で,膿胸に加え,化膿性心膜炎による心タンポナーデ症状を認めた.これら2例に対し,抗菌剤投与に加えて,胸骨正中切開による縦隔ドレナージや心嚢ドレナージ,または肋間からの胸腔ドレナージ,さらに膿瘍腔洗浄療法を併用し治癒せしめえた.抗菌剤療法に抵抗し増悪する症例に対し,膿瘍の降下経路を充分にドレナージすることが良好な結果に結びつくと考える.
  • 川真田 修, 青山 正博, 佐藤 四三, 中島 晃, 鍋山 晃
    1998 年 59 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性縦隔炎は,心・大血管手術後の合併症として認められることが多いが,頭頸部の感染性疾患が波及したdescending necrotizing mediastinitis (以下, DNMと略す)も早期に敗血症に移行し致命率の高い疾患として報告されている.われわれは, DNMの2例を経験しこれを救命した.症例1は, 65歳,男性.歯肉炎より急性縦隔炎となり,頸部ドレナージで治癒した.症例2は, 46歳,男性.急性扁桃腺炎より急性縦隔炎より急性縦隔炎となり,頸部切開ドレナージでは軽快せず,胸腔鏡下に膿瘍切開ドレナージを施行し治癒した.急性縦隔炎の早期診断には, CTが有用であり積極的に利用すべきであると思われた.急性縦隔炎に対するドレナージは,頸部からのみではなく多方向からのドレナージが救命率を上げると思われ,胸腔鏡下切開・排膿・ドレナージが低侵襲であり有効であると思われた.
  • 和久 利彦, 上塚 大一, 渡辺 直樹, 森 隆, 椎木 滋雄, 中井 肇, 折田 洋二郎, 原藤 和泉
    1998 年 59 巻 1 号 p. 108-111
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    気管支動脈肺動脈交通症の1例を報告する.症例は36歳,男性.喀血を主訴として当院受診.胸部CTにて気管支拡張像を認めたが,気管支鏡では異常を認めなかったため外来経過観察中であった.再度多量の喀血を生じたため緊急入院となった.気管支動脈造影にて気管支動脈と肺動脈の交通を認め,気管支拡張症を病因とした気管支動脈肺動脈交通症と診断した.中葉切除術を行い,術後2年6カ月経過した現在,再発は認めていない.気管支拡張症に起因する体循環と肺循環の交通は稀であり,われわれが検索しえた限りでは,自験例を含め14例の報告がみられるのみである.
  • 古池 幸司, 内藤 伸三, 竹長 真紀, 森田 晋介, 黒郷 文雄, 高井 栄治
    1998 年 59 巻 1 号 p. 112-115
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは心筋梗塞様症状にて発症し急激な経過をたどった食道胃蜂巣炎に対し,腹腔ドレナージと切開排膿にて軽快した1例を経験した.患者は49歳,男性,前胸部痛を主訴とし本院内科を受診した.心筋梗塞が疑われたが血管造影で異常はなかった.しかし急激に痛みは上腹部に拡がり,腹膜刺激症状が出現したため手術目的で外科転科となった.術前のCT所見で胸部食道から胃全体にかけて壁がびまん性,全周性に肥厚し特に胃には壁内に大量のガスが認められた.以上より食道胃蜂巣炎による腹膜炎の診断で手術を施行した.胃壁は肥厚し切開排膿部から粘調な膿の排液を認めた.術後経過は順調で術後70日目に軽快退院した.本症はしばしば致命的で,早期診断と早期治療が不可欠であるが,手術に際しては状況に応じた術式選択が重要で,術前診断にはCTが非常に有用であった.また急性腹症に際し本症の存在を念頭におくことの重要性を痛感した.
  • 福元 俊孝, 夏越 祥次, 吉中 平次, 愛甲 孝, 浜田 長輝, 喜入 厚
    1998 年 59 巻 1 号 p. 116-121
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に超音波内視鏡により粘膜筋板から発生した食道平滑筋腫と診断し,内視鏡的切除術を施行した3例を経験したので報告する.性別は女性2例,男性1例であった.発生部位は上部食道2例,中部食道1例であった.内視鏡検査にていずれも表面平滑な隆起型を呈し,正常上皮に被覆されていた.術前の生検では, 1例のみ腫瘍組織が採取され平滑筋腫の診断を得た.超音波内視鏡により, 3例とも第2層に連続した低エコー像として描出された.内部エコーは均一で,粘膜筋板由来の平滑筋腫と診断した.治療は, 2例は2-チャンネル内視鏡, 1例は幕内式のオーバーチューブを用いて容易に切除しえた.組織学的には3例とも平滑筋腫で悪性の所見はみられなかった.内視鏡的切除は粘膜筋板由来の壁内発育型や管腔内発育型の平滑筋腫に対しては非常に有用な方法と考えられる.
  • 細谷 好則, 渋沢 公行, 上野 勲夫, 長島 徹, 金澤 暁太郎
    1998 年 59 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胸部上部食道に発生し組織学的検討の結果,いわゆる癌肉腫と診断した症例を経験したので報告する.症例は71歳,男性で嚥下困難を主訴に来院した.食道造影,内視鏡検査で上部食道に全周性の狭窄を伴う隆起性病変を認めた.生検の病理組織では多形性の強い紡錘型細胞を主体とする細胞が増殖し,肉腫と診断した.食道癌取扱い規約での手術的進行度はSt IV,切除度はR III,根治度はCIであった.切除標本で腫瘤は8×4×2cmで,組織像は腫瘤部分で紡錘型細胞が肉腫様構造をとり一部に扁平上皮癌が混在していた.免疫染色で肉腫様成分においても上皮性マーカーであるEMA (epithelial membrane antigen)が陽性であったことより紡錘型細胞が上皮細胞に由来することが示唆され,いわゆる癌肉腫と診断した.本症例は3群のリンパ節転移を認めていた.食道癌と同様に癌肉腫に対しても,全身状態を考慮して拡大郭清を伴う積極的な手術療法が必要と考えた.
  • 桑原 博, 丸山 道生, 吉田 達也, 江渕 正和
    1998 年 59 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ビタミンB1欠乏により生じるWernicke-Korsakoff症候群の治療中に発見され,手術および術後化学療法を施行した早期食道小細胞癌の1例を経験したので報告する.
    症例は53歳,男性.既往歴は不明.当院内科にてWernicke-Korsakoff症候群加療中,スクリーニング目的で施行された上部内視鏡検査にて2+O-IIc型食道癌を指摘され,加療目的で当科に転科,右開胸開腹食道亜全摘,胸骨後胃管再建術, R-IIを施行した.病理組織学的にはO-Ilc型の病巣は中分化型扁平上皮癌で深達度はm3, 2型の病巣は小細胞型の未分化癌からなっており,深達度はsm3であった. n (-), ly1, v2であった.術後CDDP・5-FUによる補助化学療法を施行した.術後11カ月を経過した現在,再発の徴候なく経過している.
  • 高木 哲之介, 小川 朋子, 赤坂 義和, 岡田 喜克
    1998 年 59 巻 1 号 p. 132-137
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.糖尿病および腎機能障害にて当院内科に入院中,胃内視鏡検査で胃角小彎後壁の粘膜下腫瘍を指摘された.腫瘍の生検による組織診断は困難であったため, EUSおよび粘膜下造影を施行.胃角小彎後壁に径3cm大の辺縁やや不整で内部不均一な粘膜下腫瘍を認めた.悪性所見に乏しいため,退院後も内視鏡により定期的にfollowしていたが, 3度目の内視鏡検査で粘膜下腫瘍に近接してIIa+IIc病変を認め,生検でGroup Vと診断.手術目的で当科へ紹介入院となった.幽門側胃切除術(D2)を施行し両病変の切除を行った.
    病理組織学的に粘膜下腫瘍は平滑筋芽細胞腫で, IIa+IIc病変は深達度mの早期胃癌であり,予後は十分期待できるものと思われた.
  • 甲谷 孝史, 高橋 広, 宮内 勝敏, 堀内 淳, 鈴木 秀明, 河内 寛治
    1998 年 59 巻 1 号 p. 138-142
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    私達は比較的稀と思われる新生児十二指腸潰瘍穿孔の2例を経験した. 2症例とも生後2日女児で,嘔吐,腹部膨満を主訴とし上部消化管穿孔の診断で緊急手術を行った. 2症例とも十二指腸球部前壁に円型の穿孔(punched-out)を認める十二指腸潰瘍穿孔であった.穿孔部単純縫合閉鎖・大網被覆および腹腔内ドレナージ術を施行し,術後経過は良好であった.現在,術後4年・7年の経過観察で成長発育に問題を認めていない.
  • 中島 恒夫, 安達 亙, 中田 伸司, 藤森 芳郎, 小出 直彦, 小池 祥一郎, 梶川 昌二, 天野 純
    1998 年 59 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は18歳の男性. 1993年5月中旬より発熱,腹痛があり,近医に入院し,精査したが原因は不明であった. 6月25日に急激な腹痛を訴え,腹部X線写真で遊離ガス像を認め,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.
    開腹すると,回腸を中心に広範囲に潰瘍と思われる多数の小豆大の硬結を触知し,その中に4箇所の穿孔部位を確認した.術中内視鏡にて小腸を中心に広範囲に散在する多発性潰瘍性病変を確認し,その病変部位を約2m切除し,二連銃式の人工肛門を造設した.
    病理組織学的には深層に達する急性潰瘍と,その周辺の肉芽腫の形成を認め, Crohn病と診断した.術後3週目よりサラゾスルファピリジンの内服を開始し,良好な経過を経て術後約半年後に人工肛門閉鎖術を施行した.
    多発穿孔を生じたCrohn病は比較的稀であり,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 脇田 和幸, 楠 信也, 中路 幸之助
    1998 年 59 巻 1 号 p. 147-149
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸閉塞をきたした回腸結核症を経験したので報告する.
    症例は38歳男性. 3年前より下腹部痛,腹満感が出現し軽快,再燃を繰り返していたが,今回腹痛が強く入院となった.保存的に加療したが,入院後も嘔吐をともなう腸閉塞症状を繰り返しさらに高熱が持続した.抗結核剤投与により,速やかに解熱したが再び腸閉塞となり開腹手術施行した.回腸下部の閉塞部は全周性の潰瘍瘢痕で,ほかに輪状潰瘍を多数認め回盲部切除術を施行した.病理組織検査で腸結核と確定診断された.一般的に腸結核は抗結核剤による保存的治療によく反応するとされるが,小腸病変では潰瘍が治癒し瘢痕化して腸閉塞症状の悪化をきたすことがあり,慎重な経過観察が必要と考えられた.
  • 岩上 栄, 清水 淳三, 川浦 幸光
    1998 年 59 巻 1 号 p. 150-154
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    術前の腹部超音波, CT,注腸検査で腸重積と診断し治療しえた回腸原発悪性リンパ腫による成人型腸重積の1例を経験した.症例は53歳,男性で主訴は腹痛.入院時血液検査でHb 10.7g/dlと貧血を認めたが,腫瘍マーカーはCEA, CA19-9も正常範囲であった.腹部USでは横断像でtarget signを縦断像でhay fork signを伴う腸重積を認め,先進部は均一な低エコーな腫瘍であった.腹部CT検査では回盲部から上行結腸に約12cmにかけて腸重積を認め,先進部にはエンハンスされない内部均一な腫瘍が疑われた.注腸造影では上行結腸にカニ爪状の陰影欠損を認め回腸・結腸型の腸重積像を認めた.重積先進部の陰影欠損は表面平滑で粘膜下腫瘍が疑われ,周辺の粘膜には著明なリンパ濾胞を多数認めた.以上より,悪性の回腸粘膜下腫瘍を先進部とした腸重積と診断し手術施行した.回腸腫瘍を先進部とする回腸・結腸型の腸重積を認め腸間膜にはリンパ節の腫大を認めたため重積部を含めた回盲部切除術,第2群リンパ節郭清術を施行した.腫瘤はBauhin弁から10cmに大きさ径5.1×3.5×1.8cmで周囲の粘膜は粗造であった.病理組織学的検査は悪性リンパ腫で, non-Hodgkin B cell, diffuse, medium-sized cellであった.また, NO.201, 202のリンパ節に転移を認めた.術後に化学療法としてCHOPを4クール施行し現在再発を認めていない.
  • 丸山 千文, 松山 秀樹, 吉田 基己, 杉山 勇治, 手塚 秀夫, 増田 浩
    1998 年 59 巻 1 号 p. 155-158
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,男性.右下腹部,側腹部痛にて発症した.来院時WBC 16,600/mm3と上昇し,腹部CTにて右側腹部の膿瘍を指摘された.注腸造影にて上行結腸の引きつれ像と同部位に偏位した造影不良な虫垂を認めた.急性虫垂炎による腹腔内膿瘍と診断し,手術を施行した.術中所見では右腎下方の後腹膜に膿瘍を形成している部位が確認され,膿瘍を開放すると,上行結腸の憩室穿孔が確認された.
  • 有田 道典, 岡島 正純, 浅原 利正, 小林 理一郎, 中原 雅浩, 正岡 良之, 吉川 雅文, 児正 真也, 小島 康知, 豊田 和広, ...
    1998 年 59 巻 1 号 p. 159-163
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    全く異なる形態を呈したS状結腸子宮内膜症の2例を経験したので報告する.症例1は47歳,既婚女性.息切れを主訴に来院.注腸透視でS状結腸に隆起性病変を認め,大腸内視鏡で同部に粘膜下腫瘍様の隆起を認めた. S状結腸粘膜下腫瘍を疑い手術施行し,術中迅速病理で子宮内膜症の診断を得て低位前方切除術を施行した.症例2は39歳,既婚女性.便柱狭窄・便秘を主訴に来院.注腸透視でS状結腸に全周性の狭窄,大腸内視鏡では全周性の狭窄を認めたが粘膜はほぼ正常であった.びまん浸潤型大腸癌ないし腸管子宮内膜症を疑い手術を施行した.術中迅速病理で子宮内膜組織を確認し, S状結腸切除術を施行した. 2例ともに術後経過は良好で,婦人科にて経過観察中である.術前に確診のつかない粘膜下腫瘤・結腸狭窄の患者においては,腸管子宮内膜症を念頭に置き,術中迅速検査などで確認し,過大な侵襲をかけないような配慮が必要である.
  • 藤岡 重一, 黒川 勝, 八木 真悟, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭
    1998 年 59 巻 1 号 p. 164-168
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性,右下腹部の腫瘤触知を主訴に入院となった. CT検査で多発性肝転移を認め,大腸内視鏡検査にて上行結腸に2型の腫瘍を認めた.腫瘍は十二指腸に浸潤していたため,結腸右半切除,肝部分切除,十二指腸部分切除を施行した.病理組織学的にはchromogranin染色陽性で内分泌細胞癌と診断された.術後食事摂取進まずビタミン剤を含まない中心静脈栄養を施行中,両側注視麻痺,躯幹失調,意識障害などがみられたためMRI検査施行したところT2強調画像にて中脳水道周辺に両側性の高信号域を認めWernicke脳症と診断された. B1剤の投与にて脳症自体は速やかに改善したが,急速な肝転移および腹膜転移の増大を認め,第88病日目に死亡した.大腸の内分泌細胞癌は極めて稀で,また消化管術後のWernicke脳症の併発も極めて少ない.本例のような手術術後にもWernicke脳症が起こりうることは常に銘記すべきことと思われた.
  • 三好 明文, 蜂須賀 康己, 福原 稔之, 近藤 誠司, 船津 隆, 小林 展章
    1998 年 59 巻 1 号 p. 169-173
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌に非常に近接して併存したS状結腸脂肪腫の1例を経験したので報告する.症例は76歳女性.全身倦怠感を主訴として当院を受診.精査により,胃にA2 stageの潰瘍が認められ,入院した.胃潰瘍は良好に経過するも,便潜血反応が陽性の状態が続くため,大腸内視鏡検査を施行した.肛門縁より約30cmの部位に2型の腫瘤とそのやや肛門側に黄色調の表面平滑な隆起性病変を認めた. S状結腸癌, S状結腸粘膜下腫瘍の診断にて, S状結腸切除術を施行した.病理組織学的には, 2型の腫瘤は高分化腺癌,隆起性病変は粘膜下の脂肪腫であった.大腸脂肪腫は高頻度に悪性腫瘍,特に大腸癌を併存すると報告されている.従って大腸脂肪腫を発見した際には,因果関係は不明ながら,他の癌種,特に大腸癌の併存を考えた上で,全身を詳しく検索することが重要であると思われる.
  • 高橋 孝夫, 平井 孝, 加藤 知行, 安井 健三, 紀藤 毅
    1998 年 59 巻 1 号 p. 174-179
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腫瘍径1cm以上2cm未満で筋層浸潤がない直腸カルチノイドは局所切除の適応とされているが,根治術を行った結果リンパ節転移を認めた2例を経験したので報告する.症例1は51歳女性. Rb,径17mmの中央陥凹を伴うIsp型のカルチノイド(組織学的にはsm, ly1, v1).さらに直腸腟間腫瘤(結果的にリンパ節転移)も認め,両者とも局所切除施行.その後腹会陰式直腸切断術,子宮腟後壁合併切除を追加.左内腸骨リンパ節にも転移を認めた.術後8年無再発生存中である.症例2は37歳男性. Rs,径13mmの表面平滑なIsp型のカルチノイドで低位前方切除施行.組織学的にはsm, ly1, v0, 1群の傍直腸リンパ節に転移を認めた.術後2年無再発生存中である.これら2症例からは腫瘍径1cm以上2cm未満で筋層浸潤がない直腸カルチノイドには術前EUSでの傍直腸リンパ節転移検索,切除標本での脈管侵襲検索がリンパ節転移を予知した治療法の選択に有用と思われた.
  • 下田 貢, 門脇 淳, 堀江 健司, 小暮 洋暉
    1998 年 59 巻 1 号 p. 180-183
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 81歳の女性.下血を主訴に来院した.直腸診で直腸前壁に腫瘤を触知した.大腸内視鏡検査で,下部直腸前壁に潰瘍を伴うBorrmann 2型の腫瘤を認めた.生検で上皮下に線維束を形成し浸潤増殖した異型的平滑筋細胞を認め,核分裂像の散見する平滑筋肉腫と診断された. MRI像で腟への浸潤が疑われた.平成8年9月3日腹会陰式直腸切断術を施行した.腫瘤はRb前壁に存在し,腟に直接浸潤しており一部を合併切除した.組織学的にも平滑筋肉腫と診断されNo. 251, 252リンパ節に転移を認めた.大腸に発生する平滑筋肉腫は稀で,特に直腸の平滑筋肉腫は悪性腫瘍中約0.5%にすぎない,転移形式は血行性で肝肺への転移が多いとされている.また,手術に関しては,縮小手術の傾向が強い.本症例のように腫瘍径が2cmと比較的小さい腫瘍であっても,壁外浸潤の可能性が疑われた場合は積極的に拡大手術が必要であると考えられた.
  • 古永 晃彦, 河村 勉, 江里 健輔, 中山 富太, 藤井 康宏
    1998 年 59 巻 1 号 p. 184-188
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な肝外発育型肝細胞癌を経験したので報告する.症例は68歳女性で,腹部腫瘤を主訴として来院した.血液生化学検査では,腫瘍マーカーの内α-fetoprotein, CA19-9, Dupan-2の高値を認めた.また, HCV抗体陽性であった.画像診断では, MRI,血管造影, CT-scanなどが行われたが, CTのみが肝細胞癌を示唆した.手術時には,腫瘍は肝臓と結合組織を介して結合していた.腫瘍は周囲の血管と癒着が着しく,血管の処理に際し大量出血となり症例を失った.組織診断では,中~低分化な肝細胞癌を認めた. α-fetoprotein高値, HCV抗体陽性の腹部腫瘤の症例では肝外発育型肝細胞癌を念頭に置く必要がある.
  • 村井 信二, 雨宮 哲, 青木 成史, 鯉沼 広治, 赤松 秀敏, 原 孝志, 古泉 桂四郎
    1998 年 59 巻 1 号 p. 189-191
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌術後の肝転移は,極めて高い再発形式であるにもかかわらず,いまだに有効な治療法が確立されていない.今回われわれは,胆嚢癌術後肝転移に対し, weekly high dose 5-FU肝動注(WHF)療法を行い, CRが得られた症例を経験したので報告する.症例は29歳,男性.胆嚢癌,膵頭部リンパ節転移にて1995. 2. 27に肝床切除および膵頭十二指腸切除術を施行した.術後8カ月後にCA19-9の上昇とともにCT. USにて肝S4の肝転移が発見された.左鎖骨下動脈より肝動脈に皮下埋込み式のリザーバーを留置し, WHF療法を5-FU 1,000mg/body/week 1回5時間にて施行した.治療開始後CAI9-9は次第に低下し, WHF 15回施行後にCT. USにて,肝転移像は完全に消失しCRが得られた.その後WHF3回施行後に高度の下痢が出現した為, WHF療法を中止した. CRが得られてから9カ月を経たが, CT上も再発肝転移を認めずPSOで現在生存中である.
  • 宮本 康二, 山本 哲也, 清水 幸雄, 由良 二郎, 松波 英一, 池田 庸子, 牧本 和生
    1998 年 59 巻 1 号 p. 192-195
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝内結石症に肝内胆管癌がしばしば合併することは以前より知られているが,予後は不良である.今回われわれは肝内結石症に合併した肝内胆管癌の術後3年生存例を経験したので報告する.症例55歳女性,上腹部痛を主訴として, ERCPおよび腹部CTにて総胆管結石およびB3の肝内結石症の診断にて,肝外側区域切除術を施行した.術後の病理組織検査で肝内胆管癌を認め,切除断端にcarcinomaが達していたため,再手術により,肝内側区域切除術を施行したところ,術後経過は良好で,術後3年健在であり,再発の徴候はない.近年,肝内結石症は,肝切除術以外の治療法の成績も十分満足すべきであるが,長期間にわたり結石が存在し,慢性的に感染症を繰り返したと思われる症例においては,肝内胆管癌の合併を考慮し,術前から術中,術後に及び,慎重な術式の選択が重要と思われた.
  • 佐々木 英二, 秋田 幸彦, 北川 喜己, 橋本 瑞生, 佐藤 太一郎, 七野 滋彦
    1998 年 59 巻 1 号 p. 196-201
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは,膵原発のリンパ管腫の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は51歳男性.主訴なく, 1994年5月に会社の健康診断で肝機能異常を指摘された. US, CT, MRIなどにより,肝下面から上前腸骨棘の高さに至るまでの巨大な嚢胞性腫瘤を認めた.後腹膜原発の偽粘液腫あるいはリンパ管腫と術前診断し,同年7月29日開腹術を施行した.乳白色で軟らかい腫瘍が肝下面から右側腹部にかけて存在し,膵・十二指腸に強固に癒着していたため,手術は膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は大きさ190×165mmで,嚢胞状,内容は乳白色漿液性であった.病理組織学的にはリンパ管腫で,原発部位は膵と考えられた.
  • 青儀 健二郎, 沢村 明広, 平林 直樹, 西山 正彦, 峠 哲哉
    1998 年 59 巻 1 号 p. 202-206
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    非切除膵癌症例8例に対しmethotrexate-5-FU sequential (MTX-5-FU)療法を施行した. MTX 100mg/m2を静注し, 1時間後5-FU 600mg/M2を15分間点滴静注投与した. MTX投与24時間後より6時間毎に計6回Leucovorin 15mgを経口もしくは静注投与した.日本癌治療学会固形癌化学療法直接効果判定基準による抗腫瘍効果としてはCR 0例, PR 2例, NC 2例, PD 3例, NE 1例で奏効率28.6%(2例/7例)であり,平均生存期間は10.3カ月であった.副作用としては悪心・嘔吐および食欲低下50%,口内炎37.5%,血小板低下および色素沈着12.5%であった.これらはいずれもgrade 1ないし2と軽度であった.本療法は非切除膵癌においてQOLを考慮した期待される治療法の1つになり得ると思われた.
  • 小杉 郁子, 吉田 政之, 品川 誠, 山崎 四郎, 高橋 一郎
    1998 年 59 巻 1 号 p. 207-211
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾仮性嚢胞は稀な疾患であり嚢胞壁に上皮細胞が存在しないため,その成因は未だ解明されていない.われわれは慢性膵炎の急性増悪に合併した脾仮性嚢胞の1例を経験したので,その成因を含めて文献的考察を加えて報告する.患者は44歳の女性で,腹痛発作を訴え来院した.血液生化学的検査で急性膵炎と診断され保存的治療を開始され,その経過中に腹部超音波検査,腹部CTにて脾の嚢胞性病変を指摘された.脾摘出術を施行し,病理学的に脾仮性嚢胞と診断された.術後経過は良好であったが,退院後2度にわたり急性膵炎様発作を訴え保存的治療を受けていることから,慢性膵炎の急性増悪を反復したと考えられた.本症例は膵病変と脾仮性嚢胞の関連性を示唆すると考えられ,今後膵病変をみた場合,脾病変の合併も念頭に置き,画像診断を行う必要があると考えられる.
  • 出雲 明彦, 清水 周次, 此元 竜雄, 中垣 充, 田中 雅夫
    1998 年 59 巻 1 号 p. 212-216
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は28歳女性.無月経のため近医を受診,後腹膜の腫瘍を指摘された.血液生化学検査は正常.腹部超音波, CT, MRIで右上腹部に,頭側は石灰化を伴う脂肪成分からなる充実性成分,尾側は多房性の漿液性成分からなる巨大な腫瘍を認めた.開腹すると腹水,腹膜播種,リンパ節転移の所見はなく,腫瘍は小児頭大で漿膜浸潤は認めなかった.周囲臓器との剥離も比較的容易で腫瘍摘出術を施行した.切除標本は径20×10×7.5cm,重量1,640g,黄白色調で表面不整.割面は骨組織の混在する弾性硬で充実性の部分と漿液性の液体を含む多房性の部分が存在した.組織学的には異型の強い副腎皮質類似の細胞が偽腺管を構築して充実性部分および嚢胞内面を形成していた.免疫組織化学的検索にて上皮性マーカーが陽性であることより副腎皮質癌と診断された.充実性成分と嚢胞の混在する稀な副腎皮質癌であり,若干の考察を加えて報告した.
  • 石上 文隆, 遠藤 善裕, 木築 野百合, 谷 徹, 柴田 純祐, 小玉 正智
    1998 年 59 巻 1 号 p. 217-220
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    多発性嚢胞腎に悪性腫瘍を合併した報告は少なく,肝癌,上部胆管癌,乳頭部癌,腎癌,膵癌との合併報告がある.大腸癌との合併報告はわれわれが検索しえた範囲においては認められず,非常に稀であると考えられる.症例は57歳女性で血便を主訴に来院し,精査の後,大腸癌を合併した多発性嚢胞腎と診断され,手術を行った.文献的には,成人型多発性嚢胞腎において,腎不全は不可避ではなく, 60歳台での人工透析率は39%であり,また,肝嚢胞を合併する場合も肝機能障害はほとんど起こらないといわれる.悪性腫瘍を合併した症例においても,適応があれば積極的に外科治療を行うべきと考えられる.
  • 館花 明彦, 福間 英祐, 宇井 義典, 山川 達郎, 水口 國雄
    1998 年 59 巻 1 号 p. 221-225
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性.平成7年2月,左乳房の多発性腫瘤を主訴に,当院外科乳腺外来を受診した.平成2年に,右卵巣癌(TNM分類でT3c)にて手術施行された既往がある.今回現症として,左乳房AB領域に1~2cm大の3個の腫瘤を触知した.超音波検査にて,左乳腺に辺縁不整で内部エコーのほぼ均一な3個の腫瘤像を認め,他の画像検査においても同部位に腫瘤像が認識された.同腫瘤に対して行われた細胞診所見は,卵巣癌手術時の悪性細胞と同様の特徴を呈し,右卵巣癌の左乳腺への転移再発と診断された.
    乳腺は,他臓器悪性腫瘍の転移を受け難い臓器のひとつとして知られているが,特に卵巣癌からの乳腺転移は極めて稀である.
  • 弥政 晋輔, 松崎 安孝, 河合 正巳, 松永 宏之, 児玉 葉子, 山口 喜正
    1998 年 59 巻 1 号 p. 226-230
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.低血糖症状と腹部腫瘤を主訴に入院した.種々の検査で肝転移を伴う大網腫瘍と診断し,手術を施行した.病理組織学的には分化傾向に乏しい大網原発の肉腫,およびその肝転移と診断された.術後約1年5カ月,著明な腹膜播種のため死亡した.過去16年間の大網悪性腫瘍の本邦報告例は自験例を含め60例であり,診断には血管造影が有用であった.また腹膜播種の出現頻度は44.1%と高率であった.自験例では,血中IGF-IIを含め内分泌学的な異常を認めなかったが腫瘍内のIGF-IIは未解析であり,腫瘍性低血糖にIGF-IIが関与していた可能性は否定できない.
  • 宮下 知治, 南 昌秀, 新田 直樹, 滝田 佳夫, 北谷 真子, 蘇馬 隆一郎, 野々村 昭孝
    1998 年 59 巻 1 号 p. 231-235
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    汎発性腹膜炎様像を呈した稀な悪性腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.症例は77歳,女性で便秘を主訴に1996年5月当院内科受診した.検査上,高度の貧血とCRP, CA125の上昇を認めた.消化管精査では異常所見を認めなかったが, CT検査にて肝表面と左下腹部に限局した腹水を認めた.試験開腹を施行し,腸管の強固な癒着と大網の板状肥厚を認め,肉眼的に汎発性腹膜炎様像を呈していた.大網の一部を生検し,組織学的にも肉芽腫性腹膜炎と診断された.全身状態不良のため入院後104病日目に死亡した.剖検では腹腔内臓器は一塊となっており大網および腸間膜に腫瘤様形成を認めた.病理組織および免疫組織学的所見によりびまん性悪性腹膜中皮腫の肉腫型と診断された.本邦では本症例の如く肉眼的に結節を伴わない汎発性腹膜炎像を呈した症例の報告は少なく,また悪性腹膜中皮腫の中でも肉腫型は特に頻度が低いとされ,若干の文献的考察も加えて報告する.
  • 飯田 豊, 嘉屋 和夫, 松友 寛和, 松原 長樹
    1998 年 59 巻 1 号 p. 236-239
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜悪性線維性組織球腫(Malignant Fibrous Histiocytoma,以下MFHと略す)は比較的稀な疾患であり,自覚症状に乏しいため発見された時は巨大腫瘤になっていることが多く予後は不良である.今回われわれは,後腹膜未分化肉腫の診断で外科的切除を施行した後腹膜MFHの1例を経験したので報告する.症例は68歳,男性.腹部腫瘤を主訴に来院した.腹部CTで後腹膜に内部不均一な巨大な腫瘤陰影を認めた.腹部超音波誘導下生検では未分化な肉腫との診断で確定診断には至らなかったものの手術を施行した.腫瘤と周辺組織との癒着は軽度であり,腸管等の合併切除は行わず腫瘤のみ切除した.標本の病理組織学的検索および免疫学的組織染色によりstoriform pleomorphic typeのMFHと診断された.術後補助化学療法,放射線治療は行わず,現在経過観察中である.
  • 田中 寿明, 磯辺 真, 那須 賢司, 山崎 義哉, 田中 真紀
    1998 年 59 巻 1 号 p. 240-243
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は29歳女性,婦人科疾患精査中に骨盤内腫瘍を指摘され当科紹介となり,外来にて経過観察していたか,次第に増大傾向が認められ,今回摘出術を施行した.腫瘍は仙骨前面中央に,後腹膜に完全に被われて存在し,仙骨への浸潤は認めなかった.摘出腫瘍は8.0×7.1×6.5cm,割面は淡黄白色の弾性軟な腫瘍であった.病理組織学的には,紡錘形の腫瘍細胞が束状あるいは交錯配列する良性神経鞘腫で, S-100蛋白陽性であった.術後経過は良好で,術後9カ月経過した現在再発は認めていない.
  • 虫明 寛行, 谷崎 眞行, 藤田 邦雄, 寒川 顕治
    1998 年 59 巻 1 号 p. 244-247
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    孤立性内腸骨動脈瘤が尿管を閉塞することはきわめて稀である.尿管を圧迫閉塞し水腎症をきたした孤立性内腸骨動脈瘤の1手術例を経験した.症例は67歳,女性.主訴は右下腹部痛.右孤立性内腸骨動脈瘤による右尿管閉塞,水腎症と診断し,経皮的腎瘻を造設後待機手術を施行した.直径4cmの右内腸骨動脈瘤が右尿管と癒着し圧排伸展していた.尿管を剥離・温存し,瘤切除を施行した.
    瘤の成因は動脈硬化性であったが,何らかの炎症により尿管と内腸骨動脈が癒着し,瘤の増大にともなって,尿管の閉塞をきたしたものと考えられた.
  • 西崎 和彦, 照屋 富士己, 當山 真人
    1998 年 59 巻 1 号 p. 248-252
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性.当院内科受診時に右下肢の間欠性跛行(約500m)を訴え,右足背動脈が触知しないことから当科に紹介された.初診時表在動脈は左下肢で大腿動脈以下すべて触知したが,右側は膝窩動脈より遠位で触知しなかった.また,第3趾の脈波検査でも左側は拍動波形を認め,右側では認めなかった.ところが血管造影では右浅大腿動脈の完全閉塞以外に,左側に総腸骨動脈の完全閉塞と著明に発達した側副血行路が存在した.手術は右下肢に対してのみ右大腱膝窩動脈バイパス術を施行した.術後6カ月の現在,左下肢の症状はなく外来にて経過観察中である.
    総腸骨動脈が完全閉塞していても,自験例のごとく著明に側副血行路が発達して症状が極めて軽いことがある.よって, ASOが疑われる患者に対して腹部の手術を施行する際は,まれではあるが重篤な合併症を避けるために血管造影を施行し,病変の有無およびその側副血行路を十分把握しておく必要がある.
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