日本臨床外科学会雑誌
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乳癌予後因子としての胸骨傍リンパ節転移
麻賀 太郎吉田 明河原 悟増澤 千尋北村 和則
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1998 年 59 巻 1 号 p. 18-25

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抄録

腋窩リンパ節(Ax)転移の有無は現在最も重要な予後因子であるが,胸骨傍リンパ節(Ps)転移の予後因子としての意義は明確にされていない.そこでPs転移の予後因子としての意義を検討した.対象はPsより遠位の郭清が行われた267例である.検討方法はまずPs転移個数別の生存率を比較した.さらにPs転移の予後に及ぼす寄与度をAx転移,腫瘍径,組織学的分化度,リンパ管侵襲, ER, p53, c-erbB2の蛋白発現を説明変数として多変量解析(Coxモデル)により検討した. Ps転移個数をなし, 1個のみ, 2個以上の3群にわけて生存率を比較するとPs〓2, Ps=1, Ps=0の順に3群間で有意差(p<0.01)を認めた.またAx転移個数をなし, 1個~3個, 4個以上にわけて, Ps転移個数別に分けた(Ps=0 vs Ps〓1)生存率でもPs=0の生存率はPs〓1より有意に良好であった.多変量解析ではPs転移が最も予後に及ぼす因子であった.以上からPs転移の有無を知ることは予後の予測や補助化学療法の治療方針決定に有用である.

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