日本臨床外科学会雑誌
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無症状であった左総腸骨動脈完全閉塞の1例
西崎 和彦照屋 富士己當山 真人
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1998 年 59 巻 1 号 p. 248-252

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抄録

症例は56歳男性.当院内科受診時に右下肢の間欠性跛行(約500m)を訴え,右足背動脈が触知しないことから当科に紹介された.初診時表在動脈は左下肢で大腿動脈以下すべて触知したが,右側は膝窩動脈より遠位で触知しなかった.また,第3趾の脈波検査でも左側は拍動波形を認め,右側では認めなかった.ところが血管造影では右浅大腿動脈の完全閉塞以外に,左側に総腸骨動脈の完全閉塞と著明に発達した側副血行路が存在した.手術は右下肢に対してのみ右大腱膝窩動脈バイパス術を施行した.術後6カ月の現在,左下肢の症状はなく外来にて経過観察中である.
総腸骨動脈が完全閉塞していても,自験例のごとく著明に側副血行路が発達して症状が極めて軽いことがある.よって, ASOが疑われる患者に対して腹部の手術を施行する際は,まれではあるが重篤な合併症を避けるために血管造影を施行し,病変の有無およびその側副血行路を十分把握しておく必要がある.

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