日本臨床外科学会雑誌
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胃全摘後食道空腸胸腔内吻合の縫合不全に対して有茎肋間筋被覆が有効であった1例
十亀 徳梅本 淳梶川 愛一郎門田 康正
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1998 年 59 巻 1 号 p. 259-262

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抄録
胃全摘術後の食道空腸胸腔内吻合の広範囲縫合不全に対して再吻合および有茎肋間筋被覆を行い,良好な経過をたどった1例を経験した.胸腔内圧は陰圧であるためそこでの広範囲縫合不全の治療の焦点は,腸管内容の漏出を確実に防止することである.そのためには同時に,縫合不全部の閉鎖と,同部の腸管内の内容物の排除と,胸腔内圧を陽圧にすることが必要である.今回われわれは,食道損傷に対して行われていた有茎肋間筋による被覆を応用して縫合不全部の再吻合と補強を行った.胸腔内腸管の内容物排除のために,口腔内吸引を頻回を行い胸腔内再吻合部の唾液通過量を減じると共に,十二指腸断端から外瘻チューブを挿入して消化液の胸腔内再吻合部への逆流を防止した.持続陽圧呼吸管理により胸腔内再吻合部は,適度に圧迫されて周囲の死腔もなくなり治癒した.遠隔期にも狭窄も認めず良好な経過をたどった.本法は縫合不全の治療法としても有用である.
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