日本臨床外科学会雑誌
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同時性多発胃癌切除例の検討
遠藤 公人大内 清昭藤谷 恒明菅原 暢小野 日出麿神山 泰彦角川 陽一郎三国 潤一
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1998 年 59 巻 1 号 p. 31-35

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抄録

1967年から1994年における同時性多発胃癌176例について単発例との比較のうえで臨床病理学的な比較検討を行った.多発癌の発生頻度は6.3%であった.多発例は単発例より高齢であり,男性優位であった.主病変,副病変とも胃体部以下にある例が61.9%を占め, 32例ではC領域とA領域に病変を認めた.多発早期癌の107例では,単発例に比べ肉眼型では隆起型が多く,組織型では分化型が多かった.肉眼型は主病変,副病変とも同型の肉眼型が64.8%であった.リンパ節転移は単発例に比較して有意に転移陽性が少なかった.累積生存率は両群間で有意差は認めなかったが,早期癌では多発例で不良であった.しかし,相対5年生存率では差はみられず,多発例には高齢者と男性が多いことが予後に影響していると考えられた.
常に多発癌を考慮した治療方針の決定と術後の残胃の慎重なフォローアップが重要である.

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