日本臨床外科学会雑誌
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難治性食道静脈瘤治療後portal hypertensive gastropathyより出血した2例
御江 慎一郎濱津 隆之池部 正彦井上 文夫
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1998 年 59 巻 11 号 p. 2783-2788

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抄録

今回,われわれは難治性食道静脈瘤に対し噴門部胃切除術,および内視鏡的静脈瘤硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy:以下EISと略す)施行後, portal hypertensive gastropathy (以下PHGと略す)より出血した2例を経験した.
症例1は, 63歳,女性. 7年前,難治性食道静脈瘤に対し噴門部胃切除術, EIS施行後,外来にて経過観察中,吐血を来たし緊急入院となった.
症例2は,60歳,女性. 6年前,難治性食道静脈瘤に対し噴門部胃切除術,脾臓摘出術,およびEIS施行後,外来にて経過観察中,治療を必要とする食道静脈瘤の再発を認めたため再度EIS施行目的で入院, EIS施行後翌日,吐血を来たした.
内視鏡所見では,2例とも食道静脈瘤に明らかな出血点はなく,残胃のPHGよりoozingを認めたため, oozingを来たしていた胃粘膜に対し無水エタノールを注入し止血し得た.
EIS後にPHGから出血することもありうることが知られており,難治性食道静脈瘤は手術療法およびEISにより静脈瘤の消失が得られても,門脈系の血行動態の変化により静脈瘤以外からの出血もあるため,血行動態の把握,および厳重な経過観察が重要であると思われた.

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