日本臨床外科学会雑誌
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鼠径ヘルニア手術時に発見された精巣女性化症候群の1例
石橋 由朗鈴木 裕樫村 弘隆高橋 恒夫青木 照明
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キーワード: 鼠径ヘルニア
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1998 年 59 巻 12 号 p. 3149-3152

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抄録

精巣女性化症候群は, androgen不応性男性化異常と考えられている稀な疾患である.今回われわれは,鼠径ヘルニア手術時に本症候群と診断された1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は,15歳戸籍上女性,両側鼠径部腫瘤にて近医受診し,鼠径ヘルニアの診断を受け,手術目的にて当科紹介となった.体型,外陰部等,表現型は女性的であり,乳房の発達も良く,両側鼠径部に柔らかい腫瘤を触れた.手術所見では,両側の外鼠径輪近傍に萎縮した精巣上体を伴う精巣様の腫瘤を認められた.両親との問診より原発性無月経を確認し,精巣女性化症候群の診断を得た.手術は,両側精巣摘除術およびヘルニア修復術を施行した.女性の鼠径ヘルニアの手術の際は,本症候群も念頭におき原発性無月経など問診での確認が重要である.また精巣摘除の時期についてもその病態,予後を理解し考慮していく必要があると考えられた.

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