日本臨床外科学会雑誌
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潰瘍穿孔をきたしたMeckel憩室の1例
吉羽 秀麿木下 敬広森田 克哉大村 健二
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1998 年 59 巻 2 号 p. 412-415

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抄録

症例は12歳,男性.貧血にて入院・加療を受けた既往がある.今回,下腹部痛を訴えて当科に入院となった.血液生化学検査にて,鉄欠乏性貧血を認めた.入院後,下腹部痛の増強に加えて腹膜刺激症状が出現したため,急性虫垂炎の診断にて開腹した.腹腔内には淡血性の腹水が貯留していた.回盲弁より約90cm口側の回腸に,穿孔した大きさ6cm×3cmのMeckel摂室を認め,憩室の楔状切除を行った.虫垂突起には炎症所見を認めなかった.病理組織学的検査にて,憩室頂部付近に異所性の胃底腺組織を認めた.穿孔部は異所性胃粘膜近傍の回腸粘膜領域に存在し,活動性消化性潰瘍の像を呈していた.ギムザ染色にて,異所性胃粘膜からHelicobacter Pyloriは検出されなかった.本症例では,異所性胃粘膜から分泌される胃酸やペプシンによって近接する回腸粘膜に消化性潰瘍を形成し,出血による貧血,さらには穿孔をきたしたと推測された.

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