消化器手術後創感染の発症要因を上部102例と下部104例を対象に臨床諸因子,細菌学的検索より検討した.
閉創時創面擦過細菌培養の陽性頻度は,上部では感染群,非感染群で差はなかったが,下部では感染群(83.3%)が非感染群(57.4%)に比較し高率で(p<0.05),好気性グラム陰性桿菌,嫌気性菌が高率であった(p<0.05).
感染創からの分離菌は上部ではグラム陽性球菌が,下部では嫌気性菌が高率であり,閉創時培養との一致率は下部(33.3%)が上部(8.3%)に比較し高率であった.一方,上部では培養陰性例からの感染発症(41.7%)が下部(16.7%)に比較し高率であった.
以上より,上部では術中創汚染の創感染発症への関与は乏しく,下部では消化管常在細菌による術中創汚染が感染発症に深く関与すると考えられた.