1998 年 59 巻 5 号 p. 1267-1271
急性心筋梗塞に合併した心室中隔穿孔はいまだ手術成績が不良な疾患の一つである.従来施行されてきたDaggett法は梗塞心筋を切除しパッチにて再建するものであるが,術後高率に低心拍出症候群を呈し,これが最大の死亡原因である.われわれは当科で経験した,急性心筋梗塞に合併した心室中隔穿孔の2例に対し, Komeda, Davidらが提唱する心膜パッチを用いた左室形成術, “Endocardial patch repair with infarct exclusion”を用いた.いずれも心筋梗塞急性期に手術を施行し, 1例に冠動脈バイパス手術を同時施行した. 1例に術後遺残短絡を合併したが,血行動態には大きな影響を及ぼさなかった.本術式は心機能温存,心室瘤形成予防,術後出血の軽減等に有利であると考えられるが,心膜パッチをドーム状に縫着するため,遺残短絡の発生に注意が必要であると考えられた.