1998 年 59 巻 8 号 p. 2193-2196
予後不良と言われる胆嚢癌と肺癌の異時性重複癌に手術を施行し良好な経過をとっている症例を経験したので報告する.症例は60歳男性. 1990年7月,十二指腸と結腸に浸潤する胆嚢癌にて胆嚢摘出,肝床切除,膵頭十二指腸切除および結腸右半切除術を施行した.病理診断は低分化腺癌, ss, n1.術後MMC (10mg),ファルモルビシン(20mg)の2回の投与とUFT (300mg/日)の内服加療が開始された.経過は良好であったが術後4年,右S6に肺腫瘍を指摘され,気管支鏡検査にて腺癌と診断した.他に転移を疑う所見はなく94年6月右下葉切除, R2aのリンパ節郭清術を施行した.病理診断は高分化腺癌, p0n0. CEA, CA19-9の染色結果などより異時性重複癌と診断した.第2癌が肺癌の場合でも可能であれば積極的な治療を試みるべきであると考えられた.第1癌の術後化学療法と第2癌発生との関連の分析は困難であった.