1998 年 59 巻 9 号 p. 2295-2299
十二指腸乳頭部腺腫は比較的稀な疾患とされている.今回われわれは,十二指腸乳頭部腺腫に多発性大腸腺腫内癌を合併した1症例を経験したので報告する.症例は67歳男性で,発熱と黄疸で入院し,精査により十二指腸乳頭部腫瘍と大腸腺腫と診断された.乳頭部腫瘍に対しては局所切除と乳頭形成術を行い,現在再発の徴候はない.本症の治療には一定の見解は無いが,悪性所見を認めないときには局所切除と乳頭形成術を選択すべきと考える.また大腸腺腫の合併も考慮し,下部消化管検査は必須である.