1998 年 59 巻 9 号 p. 2348-2352
潰瘍性大腸炎の長期経過観察中に,大腸癌を合併した2例を経験した.
1例は56歳の男性.発症より10年を経過した全大腸型,慢性持続型潰瘍性大腸炎で,腹部膨満が出現し,内視鏡検査でS状結腸癌と診断された.全結腸切除術,回腸嚢肛門管吻合術を施行.病理結果は低分化腺癌, ss, ly3, v0, n2 (+), stage IIIbで,他にm~smの7個の病変を認め,すべて低分化腺癌であった.術後3カ月で癌性イレウスのため胃瘻・空腸瘻造設術を施行.初回手術から139日目に癌性腹膜炎で死亡した.2例目は44歳の女性.発症より25年を経過した左結腸型,再燃寛解型潰瘍性大腸炎. 2カ月前より下痢・下血が出現,大腸内視鏡検査で直腸癌と診断された.全結腸切除術,回腸嚢肛門管吻合術,回腸瘻造設術施行.病理結果は粘液癌,se, ly-3, v-2, n3 (+), stage IVであった.術後1年で右卵巣転移,癌性腹膜炎にて子宮・両側付属器切除,回腸切除術,回腸瘻造設術を施行, 3カ月後に癌性胸膜炎にて死亡した.
潰瘍性大腸炎の長期経過例におけるtotal colonoscopyによるcancer surveillanceが一般的となっている中で,症例1は3年間,症例2は4年間の間隔があり,早期発見の機会を失ったことと,組織型が低分化腺癌,粘液癌であったことで,2例とも術後早期に再発死亡した.